先日、弊社配給の映画『ザ・トゥルー・コスト』(ファストファッションの裏側を追ったドキュメンタリー)をキッカケにご縁が深まった、毛皮のリフォーム・リメイクをしているTADFUR(タッドファー)さんを訪問してきました!
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「毛皮」といえば、有名ファッションブランドのアルマーニが使用を廃止するなど、動物愛護の観点からは近年好まれなくなってきていますが、しかし、今すでに手元に持っているとしたら、それを使わずに処分してしまうことこそ、動物からもらった”命”を無駄にしてしまうことになるのではないでしょうか。
一方で、持ってはいても、重くて着にくかったり、デザインが荘厳すぎて着られるタイミングがなかったり…タンスの肥やしになってしまうことも多い毛皮製品。それらを、毛を抜いて軽くしたり、デザインを変えてモダンにしたり、残り素材からバッグやマフラーを作ったりしているのが、TADFURさんです。
毛皮の「高級・セレブ」なイメージを変えて、もっと自然に近いもの、身近なものに感じてもらいたい。(よくよく考えると、太古の昔の防寒具は毛皮だったと思いますし…一番ナチュラルな衣料とも言える…?)
そんな思いで、会社のフィッティングスペースも、温室をイメージした丸みを帯びた木で包まれていました。中央には生い茂った木もあって、都会の真ん中にありながら、どこかピクニックに来たような気分になります。
もともとは、戦後、進駐軍の人たちを中心に毛皮の販売に携わっていたそうですが、そのうち、「修理はできないのか?」とお客さんから依頼されるようになって、独立してリメイク、リフォーム、リペアの専門店を始めたそうです。
服のリメイクといえば、布地を切って、つなぎ合わせて…と、わりと簡単にできるイメージだったのですが、毛皮はまったく別物でした…!
というのも、そもそも毛皮の「生地」はこんなふうに細かく縫い合わされてできているからです!
動物の体からとられる毛皮は形も真四角ではなく、毛の長さや質感も、上半身側と下半身側で異なります。そのため、そのまま縫い合わせようとすると、毛の質感の違いが凸凹と表れてしまいます。そこで、上の写真のように細長いパーツに切り分けて、まるで葉脈のように縫い合わせていくのです。(文章でうまく伝え切れているか不安ですが…(汗)。)
一見、一枚の「皮」のように見えて、じつはものすごく細かくツギハギされて、なだらかなキレイな毛皮ができていたのです。写真のような縫い合わせた生地の上に、裏地を縫い付けているため、普段このような状態を目にすることはないですが、ものすごい手間暇をかけて、毛皮製品が作られていることを知りました。
そしてリメイクも、この縫い合わせたものを一本一本ほどいて、新しい形に合わせて、縫い合わせ直すのだそうです。ただ、逆にこれだけ細かいパーツで作られているからこそ、リメイクもしやすいのだとか。
これまでは、ご自身がお持ちの毛皮製品を、リメイクされるお客さまが多かったそうですが、最近は親子二代でいらっしゃるお客さまも増えてきているそうです。次の世代にも受け継がれるくらい長く使われるのは素敵!!
そして、TADFURさんは、毛皮の命を大事にしているだけではありませんでした。
毛皮のリメイクの過程では、いわゆる端切れや、軽くするために抜いた毛もたくさん出ます。それを捨ててしまうのはもったいない!という思いから生まれたのがこちら↓
余ったファーで作った蝶ネクタイ、指輪、ヘアアクセサリー(社外のデザイナーさんが製作)。どれもとっても可愛くて、”余り物には福がある”とはこういうことかと、一人納得していました(笑)。
それだけではありません。さらに、こちらも↓
お客さまの体に合うかを確かめるために、最初につくられる仮縫いの型(トワル)。すべて頑丈な木綿生地で作られていますが、これまでは型取りが終わると、すべて捨てられていたそうです。(少なくとも年間1,000着くらい…。)TADFUR3代目である松田真吾さんは、これをどうにか活用できないかとSNS上で、利用したい人を募集したところ、イベント時のユニフォームや舞台衣装等に活用したいと、様々な声が寄せられ、今では廃棄が「ゼロ」になったそうです!!
”オープンソース”にしたことで、自分自身では思いも寄らなかった使い方のアイディアが集まって面白い、と松田さんはお話ししていらっしゃいました。
端切れや余りのファーも、使用後のトワルも、まだ使い方の案を募集中とのことですので、何かアイディアが湧いた方はぜひTADFURさんにご連絡ください!
ちなみにトワル再利用プロジェクトについては下記にFacebookページもあります。
https://www.facebook.com/tetoileproject/
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TADFURさんとのご縁が深まったキッカケの『ザ・トゥルー・コスト』は、私たちに、ファッションとの向き合い方を問いかけなおす作品です。個人的には、おしゃれをすること、装うことそのものが、悪いことだとは思っていません。むしろ、それが喜びや勇気、エネルギーをくれることもあると思います。
大切なことは、その衣料の「命」をどれだけ大切にできるかなのではないかと、TADFURさんを見学し、職人さんがひとつひとつ丁寧に新たな命を吹き込んでいる姿を目にして、あらためて感じました。
(Text: Ayah)