ユナイテッドピープルのアーヤです。
ずっと前から気になっていたダイアログ・イン・ザ・ダークに、ようやくおじゃましてきました。これは、照度ゼロの真っ暗闇を、”暗闇のエキスパート”(目の不自由な方)にガイドをしてもらいながら、7人の”仲間”とともに冒険する体験型パフォーマンスです。
おそらく多くの人が小学校や中学校で、目隠しをして、視覚障害の体験をするような授業を受けたことがあるのではないでしょうか?私もぼんやりとその記憶が残っています。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、一見、学校での体験授業と同様の試みに思えるのですが、終えてみたときの印象はまったく違いました。
学校の授業は、「視覚障害の人の立場にたってみる」ことがおそらく目的であり、だからこそ、「目が見えないってこんなに大変なんだ!辛いんだ!!」という印象を受けた気がします。目が見えない人生なんて怖い!!って思ったように思います。
でもダイアログ・イン・ザ・ダークは、終えたとき、不思議なワクワク感と小さな幸福感が胸を温めていました。
それはおそらく、「目が見えない体験をする」のではなくて、「視覚に頼らないで、他の感覚で世界に触れてみる」ことを目的とした場所だから。目が見えないことをマイナス要素とするのではなく、照度ゼロという、日常にはありえない世界を体感できることに「価値」を生み出している場だからではないかと思います。
その中での気づきや感じたことが大量にあるため、簡単に箇条書きすると…
- 普段はまったく意識しないものの、意外に足の裏でどんな地面(石/土/芝生)か判断できたり、空気の変化(部屋の移動)を肌で感じ取ることができたり、手で触れただけで、それが何モノかを判断できたりすることに、小さく驚きました。
- 真っ暗闇のなかで、お菓子と飲み物を味わったら、普段より味や食感を強く感じました。最近、パソコンしながら食べることが多かったこともあり、いかに普段食べ物へ意識を働かせていないか、反省しました。
- 真っ暗闇のなかでは、声が聞こえないと、ひとり取り残された気分になり、ものすごい不安に駆られました。人の声が聞こえることがこんなに安心感をもたらしてくれるとは…。
- ふだん初対面の人と身体的に触れ合うことはほぼないですが、暗闇のなかでは、手をつなぐこと、手を使って伝えることが、ある種の”命綱”になるため、自然発生的に「触れ合い」が生まれていました。そしてその温もりを、普段よりも強く感じました。
- 暗闇のなかで芝生にしばらく寝転がったとき、眼を閉じても開けても、まったく変わらない光景なことが不思議な気分になりました。少し、宇宙にいるかのような気分に…。
そして何より個人的に印象的だったのは、暗闇のなかで、お茶をしながら同じグループの人たちと会話をした時間でした。
聴覚が頼りになる分、相手と声がかぶらないように、自分が喋り終えたら、黙って相手の言葉を待ち、相手も私が喋っているときには、なるべく声を出さないようにする・・・。そうすると、真っ暗闇のなかに言葉を投げかけないといけないのです。声が聞こえなければ、そこに本当に相手がいるのかも分からないですし、相手がどんな気持ちで自分の言葉を受け止めているかも分からないのです。その時に心の奥に湧いてきた不安感は今までに感じたことがないものでした。
普段いかに、相手の表情や仕草などの「視覚」を頼りにコミュニケーションをとっているのかを痛感しました。
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約90分間、暗闇を一緒に冒険した仲間と、暗闇を抜け出てからほぼ初めて顔を見合わせたとき、暗闇のなかでは、ぐっと縮まった距離感がまた、「見える」がゆえの恥ずかしさで、すこし離れたような感覚がありました。
先日、ダイアログ・イン・ザ・ダークを日本にもってきた志村真介さんのお話を聞く機会があったのですが、そのときに印象的だったのが、体験者を導くガイド役は、「目が見えなく”ても”できる仕事ではなくて、目が見えないから”こそ”できる。むしろ目が見えない歴が長いほど有利になる」とお話されていたことでした。
ネガティブに捉えられがちなことが、ポジティブな価値に転換される。
そのことは、体験全体を通じても強く感じました。
…とはいえ、百聞は一見に如かず。これは体験をしてみないことには分からないものだと思います。ぜひ一度、ご自身の体と心で感じてみてください。
★☆★ダイアログ・イン・ザ・ダーク東京★☆★
東京都渋谷区神宮前2-8-2 レーサムビルB1F
TEL : 03-3479-9683
チケット予約:http://www.dialoginthedark.com/ticket_info/
