2026年10月2日

映画『拝啓アシタ DEAR TOMORROW』公開初日舞台挨拶レポート


9月26日(土)、映画『拝啓アシタ DEAR TOMORROW』の公開初日を迎えたシアター・イメージフォーラムにて、上映後の舞台挨拶が行われた。登壇したのは、キャスパー・アストラップ・シュローダー監督、出演者のワタナベショウコさん・サワマサトさん、そしてNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の根岸督和さん。司会はユナイテッドピープル代表の関根健次が務めた。撮影開始から約4年、世界各地での上映を経てついて迎えた日本公開の初日。登壇者それぞれが、率直な言葉で胸の内を語った。

「ここが最も大切な上映の場」──シュローダー監督、日本公開への思い

関根がキャスパー監督に「今の気持ちをお聞かせください」と呼びかけると、監督は静かに、しかし力強く語り始めた。

シュローダー監督

「私たちはコロンビア、オーストラリア、スペイン、スウェーデンと各地を旅してきました。でも私にとって、ここが最も大切な上映の場だと感じています。なぜなら、この映画のテーマの故郷であり、主人公たちの故郷でもあるからです。ついに東京でこうして上映できることを、心から嬉しく、ありがたく思っています」

「これがスタートになったらいい」──ショウコさんが語った4年間

続いて、出演者のショウコさんが登壇。大きなスクリーンで自分の姿を見た感想を問われると、言葉を選びながらこう答えた。

ショウコさん

「自分を客観的に見るのは、ちょっと恥ずかしい部分もありました。初めての撮影が4年前で、自分の人生を暴いているような感じがして、見ていて気持ちがグッとなるところもありました。私自身、すごく生きづらさを何十年も抱えてきて、本当にいろんなことがあったんですけど。そんな自分がこうしてスクリーンに映されて、本当に感慨深い気持ちでいっぱいです」

さらにショウコさんは、撮影期間中の苦しい日々についても触れた。コロナ禍で失業を経験し、「生活苦でもう死ぬしかない」と福祉の窓口に連絡したこともあったと振り返る。

ショウコさん

「自分のことをずっと欠陥人間だと思ってきていて、自分の肯定感がめちゃくちゃ低かったんです。何のために毎日起きてご飯を食べて、誰もいない部屋に『ただいま、行ってきます』を言って——そういうのを繰り返すことがすごく無意味に感じていました。でもこの作品に出ることで、生きていればたまにはこういうちょっとすごいことが起きるんだなと気づいて。今日を迎えられたことがすごく嬉しいし、ありがたいと思っています」

「これがゴールとは思っていない、これがスタートになったらいい」という言葉が、会場に静かに響いた。

「周りの人がくれるきっかけ」──マサトさんが伝えたこと

マサトさんは、撮影当時と大きく変わった外見——髪の色、表情、そして腕に刻んだ「翼」のタトゥー——が会場の笑いと温かい拍手を誘った。

マサトさん

「ショウコさんは4年を経て自分の人生に色がついてきたとおっしゃいましたが、僕の場合は髪に色がつきました(笑)。映画が海外で公開されてから、ストリーミングで観てくださった世界中の方々からたくさんのメッセージをいただいて。あんなに泣いてばかりだった僕のことを、皆さんポジティブに受け止めてくれていて、『あなたはあなたの思うように生きていけばいい』という言葉をたくさんもらいました」

そして、孤独や生きづらさと向き合う人たちへ、こんなメッセージを送った。

マサトさん

「よく、自分は自分からしか変われないと言われますよね。でも僕にとっては、変わっていくきっかけを作ってくれたのは、僕以外の人でした。もし今、内向きな気持ちで戦っている人がいるとすれば、周りの人がくれるきっかけは無数にあって、そのきっかけという船に乗りかかっているなと思ったら、もうそのまま乗っちゃって、流れに身を任せてみてほしいと思います」

「1件1件のやりとりが、確かに届いていた」──根岸理事長

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の根岸さんは、チャット相談を通じて出会った2人と、初めて公の場で言葉を交わした。

根岸理事長

「私どもは24時間365日、無料・匿名で相談を受けていますが、相談者の方と直接お会いする機会はほぼゼロです。毎日1200件の相談が届いていますが、すべてには対応できていないのが現状です。それでも、1件1件に相談員が真摯に向き合うことで、マイナスだった気持ちが少しでもゼロに近づくお手伝いができていれば——と思ってきました。今日お2人の姿を見て、確かにお役に立てていたのだと感じることができました」

根岸さんは目に涙を浮かべながら語り、会場も静まり返った。

「小さなつながりが、大きな意味を持つ」──シュローダー監督のラストメッセージ

最後にシュローダー監督が、この作品を通じて自らが気づいたことを語った。

シュローダー監督

「私がこのプロジェクトで学んだのは、ほんのささいなつながり、ほんの小さなやりとりが、いかに大きな意味を持つかということです。今の社会はセルフレジやアプリで何でも一人で完結できる方向に進んでいますが、それはつながりを失わせてもいる。バスの運転手さんに挨拶をする、スーパーのレジの人に『ありがとう』と言う——そのひとことで、あなたはここにいる、と互いの存在を認め合うことができる。私自身、今はスーパーでセルフレジを使わないようにしています。知らない人に話しかけることを、以前よりずっと大切にするようになりました」

「歩いていく様を、見届けていただけたら」

閉会の言葉として、ショウコさんがこう語った。

ショウコさん

「生きづらさを抱えていたり、自分が生きていいのか分からないとか、居場所がないって人もいると思うんですけど、こんな風に人間って、しゃがんでいたところからちょっとずつ立ち上がって、なんとなく前を向いて歩いていくんだということを、少しでも心に留めて帰っていただけたらすごく嬉しいです」

舞台挨拶の後は、ショウコさんによるCDサイン会も行われ、会場は温かい空気に包まれたまま幕を閉じた。

映画『拝啓アシタ DEAR TOMORROW』は、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー中。

公開2日目の舞台挨拶では、マサトさんからの重大発表も!