伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)
NGOを含む国際援助とは、貧困を「商品化」することであり、それがどう売られるかを知る権利をその所有者から剥奪することで成り立つ“業界”である…。こう発言し、本を書き、“業界”から総スカンを食らった。今から四半世紀前のことである。そういう僕も、かつてそこに身を置き、二人の子供をインタナショナルスクールに通わせ、家まで購入した。「無邪気な善意」を操るのは、経済的恩恵だけでなく、精神的至福をも、もたらす。一度入ったら、なかなか止められない業界なのだ。とは言っても、援助は必要だ。“業界”の存続が目的化してしまううちに停止するならば、だ。
日本人よ。こういう批判を、援助しない理由にしてはいけない。そもそも、寄付文化が途上国並みのあなたたちは、反省をする経験値さえない。『ポバティー・インク』が示唆するよいうに、“業界”が成り立つ「貧困を生む構造」の問題は、資源をめぐる“自由”という名の野放途な世界交易にある。日本人は、先進国の中で最も無批判にそれらを消費する国民なのだ。まずは金を出すことで反省しろ。