2016年8月6日公開 ユナイテッドピープル配給

監督・プロデューサー:マイケル・マシスン・ミラー

監督・プロデューサー:マイケル・マシスン・ミラー

ポバティーキュア設立者、ポバティーキュア諮問委員会会長、アクション・インスティテュート主任研究員であり、ポバティーキュアDVDシリーズの主催者、そして監督でもある。 哲学、国際開発、国際ビジネスの学士号を有する。ヨーロッパ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ各国を旅し、居住した経験をもつ。 国際開発、起業家精神教育、政治学、道徳哲学など、幅広いテーマについて講演活動を行っている。フォックス・ビジネスをはじめ多くのラジオ番組に出演しているほか、ニューヨーク・ポスト、 ワシントン・タイムズ、デイリーニュース(ロサンジェルス)、デトロイトニュース、リアル・クリア・ポリティクスで執筆も行っている。

作品の背景

映画『ポバティー・インク』は、2007年に開始し、2011年に正式に設立された「ポバティーキュア」という貧困削減に向けて活動する人々の国際的連携を目標とするプロジェクトから芽生えた。個人の創造性を引き出すことが人間の繁栄であるというモットーのもと、数年がかりで、20カ国、総計200回以上のインタビューの研究や撮影を行った。加えて、350以上のパートナー団体と、144ヶ国にわたる120万人のファンを持つフェイスブックページのコミュニティを作り上げた。

PovertyCure

ハイチ米の悲劇

Q. 映画『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』を制作しようという動機を教えてください。

私たちはよく貧しい人々について、個々人の人生のドラマについては関心を寄せず、チャリティーや憐れみまたは愛の対象として捉えがちだということを伝えたいと考えたことが本作の制作の動機です。この映画によって、一人ひとりの人生に光を当てた貧困に関する対話や議論が進むことを望んでいます。

貧困産業は問題に対して社会工学的なアプローチをしがちですが、開発途上国の人々は解決されるべき問題ではありません。彼らはそれぞれ物質的に恵まれているかどうかに関係なく、それぞれの人生を全うしているのです。人道主義モデルは人々をユニークでコピーのできない個性ある人々としてではなく、水平にカテゴリー分けをして取り扱おうとしてきたのです。

貧困についての考え方や枠組みは、数十億ドル規模の産業を発展させるに至りました。他の産業と同じく、貧困産業もビジネスを維持しようとしています。この産業内で働く人々の善意に関係なく、貧困解決よりも自らのコミュニティの利益が優先される構造になってしまっているのです。

 Q. チャリティー団体に寄付するときはよく考えるべきですか?

はい、チャリティー団体への寄付はじっくり考えるべきです。しかし、寄付してはならないということではありません。これは重要なポイントです。私自身、幾つかのチャリティー団体にまだ関わっています。重要なことは、あなたが協力や投資するチャリティー団体が、本来すべき仕事をしているか問うことです。

もし支援しようとしている団体が、子どもの里親制度や養子縁組をしている団体なら、彼らに家族が一緒に居られるよう、両親にどんな支援をしているのか聞いてみてください。里親制度なら、そもそもなぜ支援が必要なのか聞くといいでしょう。里親制度がこの団体の主な活動でないのなら、他団体とのパートナーシップを組んでいるか聞いてみてください。

養子縁組なら、その団体が家族が一緒に居られるよう最大限の努力をしているかどうか聞いてください。子どもを家族から引き離すことは最後の手段でなければなりません。その団体は子どもと別れなくていいよう努力しているでしょうか?私たちがこのような質問をしないから、団体はこれらを団体の基本的な方針としないのです。

あなたが寄付する金額が少額だったとしても、寄付者としてあなたは大きな力を持っています。もしあなたの質問によってその団体の人が迷惑がり、まともに質問に答えないなら、その団体は寄付に値しない団体です。

 Q.この映画を公開して受け取った一番大きな批判は何ですか?

この映画で私たち映画制作者自身が映画のスクリーンに出てきてこう考えて欲しいと言わないようにしました。伝達手段としてのドキュメンタリーの価値は、私たちが出会った素晴らしい人々を紹介できることにあります。彼らの語るリアルなストーリーはこの映画に欠かせませんでした。

この映画への一番大きな批判は、この映画がビジネスが唯一の貧困の解決方法だとしていると誤解することで起きます。私たちの主張は、お互いに価値を与え合うことが豊かさにつながるということです。そのためには人々の権利が守られていなければなりません。私たちは経済的な交換を促進するだけでなく、文化や知性の交換を行うことでコミュニティや国の発展を見ることができます。貧しい国々に欠けているのはビジネスや起業化ではなく、所有権や正当な裁判権などの法整備なのです。ビジネスや市場取引は人々やコミュニティが発展するための基本的な手段ですが、そこにはビジネス以前に正当な経済、政治、社会的な制度が必要です。

Q.映画で緊急時の支援は必要だとありますが、どんな支援が適切なのでしょうか?

ハイチ地震を例にすると、あのような危機下において国際協力は間違いなく必要です。道徳的に不可欠なことです。問題はどのように支援するかということです。

ハイチでは、私たちはほとんど考えることがありませんが農場は地震で破壊されなかったのです。食糧供給がほとんど無傷でできる状況でした。ポルトープランスでは電力停止とビルの倒壊により、多くの生鮮食品が失われましたが、ハイチの食糧供給は問題なく青空市場で行われていました。これは古典的な間違いなのですが、私たちは食こそが解決されるべき問題だと思ってしまうのですが、実際に解決されるべき問題はその食を交換する手段なのです。

市場で農産物を売って生計を立てる農家にとっては、顧客が農産物を買う余裕がなくなったことや、食糧援助によって食糧が市場に溢れたために農産物が売れなくなったことの方が地震よりも大きな被害でした。私たちは地震後に食糧不足があったと考えがちですが、実際には食糧分配のメカニズムが停止したことで多くのハイチ産の食糧が腐ってしまったのです。交換のための手段である現金が失われたことと、そして食糧援助が状況を悪化させました。

アメリカの農産物をハイチに届ける代わりに、ハイチの地方のコミュニティから農産物を買い上げ、都市部に供給するシステムを構築していたらどうだったのでしょうか?私たちには例えばドローンなど進んだテクノロジーがあります。ドローンが買い上げた地域の農産物を危機的な地域に運び入れることができていれば、地震の影響を受けなかった農家たちが育てた農産物が腐るなんてことはなかったでしょう。そうではなく、私たちはアメリカ産の農産物を届け続け、この危機を悪化させたのです。これは緊急援助に対して地元地域を優先して考えるシンプルなアイデアです。

残念ながら地元優先の考え方は、緊急物資にアメリカ産を届ける考えを持つアメリカの政策や法律にそぐわない考えです。税金を使って人助けをするなら、自分たちの経済が良くなり雇用が増える方法で行おうということです。例えばUSAIDアメリカの国益を最大化することを優先する政府機関であることを忘れてはなりません。残念ながら、この考え方は多くの場合援助業界で働く人々の目的を害することになるのです。