政権に対抗する者は全て「テロリスト」と断定され、容赦ない空爆が繰り返される。包囲された街からの逃げ道はない。
人々が繋がりながら育んできた日常は、圧倒的な武力により分断される。その力に抗い続けた街は最終的に政権に「奪還」され、この地で生活を営んでいた人々は強制的な退去を余儀なくされた。
このシナリオは映画の舞台であるアレッポだけではなく、シリア全土で繰り広げられて来た。そして現在もなお、一方的な武力に晒されている地域で生活を続ける人々がいる。
我々はこの不条理を未だに看過しているようだ。
人間の尊厳を求める現地からの呻きは、ネット上に溢れる情報の中で、埋もれていく。これを埋もれさせているのは。しかし今や空爆ではなく、私達の無関心だ。
私達はもう一度シリアで起こっていることに真摯に目を向けるべきだ。これは遠い国のファンタジーではなく、まさしく人間性に対して提示された、途方もなく重い問いなのである。
2019年4月22日
山崎やよい
山崎やよい
シリア紛争被災者支援プロジェクト「イブラ・ワ・ハイト」発起人
元アレッポ博物館客員研究員
元アレッポ大学人文学部考古学科講師
京都府生まれ。考古学研究者。89年に渡航後、アレッポを基盤に博物館研究員として発掘調査・研究を行い、アレッポ大学講師の経験ももつ。その他、JICA(国際協力機構)の専門家として博物館教育活動にも関与。現在、テレビ取材のコーディネートや通訳などに従事。ブログ「山崎やよいのブログ」で、シリアの今を発信中。
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