2019年4月13日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー ユナイテッドピープル配給

レビュー

「空爆」という漂白された言葉の向こうに広がる、あまりにも過酷、だが同時に、あまりにも人間的な真実。この映画を観るまで、僕はその想像力をまったく欠いていた。

ライムスター宇多丸(ラッパー/ラジオパーソナリティ)

2015年末、難民たちと同じルートでヨーロッパを旅して多くのシリア人と出会った。ホワイト・ヘルメットやシリア残留者たちと難民との違いは、ミサイルの雨が降る地獄に直面して、逃れるか、留まるかの選択をしただけ。決断の理由は同じ。故郷と家族への愛だ。

丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)

降り注ぐ爆弾と瓦礫の中から命を救う男たち。人々は必死に生きようとしてきたのだ。
スクリーンに映し出されるシリアの無差別爆撃の絶望的な惨状は内戦初期から伝えられていた。
非情な現実で彼らを追いつめていったのは、私たちの無関心と無責任ではなかったか。

安田 純平(ジャーナリスト)

地獄に似た光景の中で、それでも絶やされることのない慎ましい灯り。市井の人々で編成された救助隊員たちの葛藤。幼い愛娘の呼び声「パパ、早く帰ってきてね」「今すごく怖い映画を観ているの」「動画の撮り方を習ったよ」ひとつの作品が戦場のすべてを明らかにすることはないだろう。だが命がけのフィルムは繋ぎ合わされ、これからも或る真実を照らし出そうとする。「動画の撮り方を習ったよ」「パパ、早く帰ってきてね」

七尾旅人

アレッポに足を運ぶと、僕は空をよく見上げていた。上空を戦闘機やヘリコプターが通過すると、生きた心地がしなかった。勇敢でたくましくヒーローだと称賛される男たち。しかし、ときに男たちは絶望し、弱音を吐露する。人が生きるにはあまりにも過酷な環境で、それでも命を犠牲にして闘い続ける男たちに僕は涙するしかなかった。

桜木武史(フリージャーナリスト)

私達はもう一度シリアで起こっていることに真摯に目を向けるべきだ。これは遠い国のファンタジーではなく、まさしく人間性に対して提示された、途方もなく重い問いなのである。( 全文 )

山崎やよい (シリア紛争被災者支援プロジェクト「イブラ・ワ・ハイト」発起人)

余りに酷いシリアの実情が露わになる衝撃と感動のドキュメント。

SUGIZO(ミュージシャン)


これまで多くの映画が「戦争」を扱い、それを見た観客はその悲惨さを憂い、理不尽さを憎んだ。しかしドキュメンタリーであれフィクションであれ、それらの映画は、戦争の後に撮られたものだ。

この映画は違う。現在進行形の戦争を、空爆の下でカメラを回しながら(それも、とてつもなく見事なカメラワークで)空爆がもたらす本当の被害と、その下にいる人々の絶望的な日常を描き出す。非日常の中に差し込まれた金魚の映像。

この、あまりに優れたドキュメンタリーが少しでも多くの人の目に触れることを願います。

菱田 雄介(写真家/映像ディレクター)

自分がシリアに暮らしていたことも、シリアの人々と交流のあったことも、このドキュメンタリーにただならぬものを感じた大きな理由のひとつかもしれませんが、 それ以前にこのようなドキュメンタリーを撮ろうと思い、実際に撮った人がいたこと、そしてこのドキュメンタリーを撮ることをサポートしてくれた人々やバックグラウンドを思うと、何より深く気持ちを揺さぶられます。成熟した人々の意欲と理解が重ならなければこんな壮絶な作品は生まれなかったでしょう。

ヤマザキマリ(漫画家/随筆家)