ドキュメンタリー映画『変身 - Metamorphosis』について、映画『フタバから遠く離れて Nuclear Nation』の舩橋淳監督からのレビューが届きました。
まず、東電のテレビ会議をじっくり編み込んだシーンが秀逸だ。
このビデオはウェブで一般公開されているものの、全部見ることは到底不可能な大量の動画だ。「大量公開の暴力」に負けじと果敢に挑み、全てのフッテージを看破して編集し、紡ぎ上げただけでも大変な労作である。
しかも、東電と官邸がいかに情報を外に出さないようヤッキになったのかが手に取るように分かるだけでなく、東電のプレス部は結構がんばって露出させようとしていたんだな、抑圧していたのはやはり東電幹部なのか、とリアルタイム感バリバリの現場が見えてくる。その臨場感のなか隠蔽を目撃したとき、人はその罪の真の意味を発見する。
さらに、54年前カリフォルニア州SSF(サンタスサーナ原子炉実験場)で起きた事故が、いま住民を恐怖に突き落としていること。さらにそこで語られる住民と電力会社のやり取りが、まるでいまの福島を目撃するかのようであること。堀潤がやったことは、日米の原子力災害を往復することでその功罪を普遍化し、いま我々の目の前で起きている事が、ずっと昔にも起きていたこと、そして、ずっと先にも起こりえるということを示した。
大げさでなく今人類は目の前の問題だけでなく、20年、30年後、100年後を見越したヴィジョンを必要としている。
時代を超えた原子力の在り方を考えるため、我々は「変身」を正面から受け止めねばなるまい。
舩橋淳
映画監督