2020年3月28日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
社会を持続可能な方向に導くために考案されたはずの「グリーンな」認証。その本来の意図を軽々と踏みにじる企業の利益至上主義。いわゆる一般的な生活者の目線とユーモアを大切にする監督の姿勢もあって、ニュートラルな心の状態を保ちながら深刻な実態を追体験できる優れたドキュメンタリーだ。正直に言って、エシカルな消費行動や認証ラベルの意義などについての普及活動をしてきた私は、不誠実な企業による裏切りとも取れる行為の数々に目眩がするほどのショックを覚えた。

それでも尚、私はこれからも、さまざまな認証を参考にして生活をおくるだろう。なぜなら、この地球上のたくさんの場所で起きていることに想いを馳せるとき、認証という仕組みがなければ世界はもっと酷いことになっていると感じるからだ。今の社会システムが次のステージに進むための手段としての可能性を持つ認証制度そのものを批判するだけでは、持続可能な社会づくりに貢献することにはならない。悪いのは認証そのものではなく、その仕組みを悪用する既得権益者と、認証を盲目的に信じる私たち生活者だ。私たち全員の幸せにとって欠くことの出来ない持続可能な社会を実現するには、一人ひとりが自分自身の目を、耳を、感覚を研ぎ澄ませて、真実に迫る努力をするほかないということを、改めて突きつけてくれるありがたい作品だ。

末吉里花エシカル協会代表
“グリーン・ライ”を終結させるためには、大量消費主義と闘う原動力を、魂の底から掘り出さなければならない。わたしたちは、今この瞬間から選ぶことができる。このままウソをつき続けて金を得るのか、それとも、使命に従い自らの命を全うするのか。
井出留美食品ロス問題ジャーナリスト
SDGsの影響で、遂に大企業もサステナビリティを掲げるようになったが、すべてを鵜呑みにしてはいけない。この映画が暴くその事実を知って「消費する恐怖」がより高まった。さあ、あなたはこれからどうする?
四角大輔執筆家・森の生活者
イギリスのチャールズ皇太子がグレタ・トゥンベリに会いに行くのに自家用機とヘリコプターを乗り継いだというニュースを見ました。でも、彼を批判する立場ではない。ぼくも車に乗るし、飛行機にも乗ります。先進国では本当に「エコ」な生活を送っている人はほとんどいませんが、少なくともその事実を自覚する方がいい。この映画を見れば課題の大きさにめげそうになります。でも、ノーム・チョムスキーが言うように絶望は禁物です。意識ある市民が力を合わせて、政治家や企業に騙されないように、正しい情報を集めて多くの人と共有することが第一歩だと思います。
ピーター・バラカンブロードキャスター
危機を乗り切るためにユーモアが大切であることを、僕はグリーンランドや南米パタゴニアのフィヨルドや氷河を人力で旅した仲間から学んだ。僕にはない資質を持ったその友人は、状況が深刻になればなるほど独特のセンスを発揮して皆を笑わせた。今、人類は未曾有の危機を迎えている。状況を深く知れば知るほどシリアスにならざるを得ない。でも多くの人々は暗いニュースは好きではないし、耳に痛い話は本能的に避けようとする。大切なことは問題解決への近道を見つけることで、多くの場合、怒りよりもユーモアの方が状況を良くすることに繋がる、というのが今のところの僕の考えだ。そう言う意味でも、この映画の意義は大きい。
辻井隆行元・パタゴニア日本支社長
この作品、今にも息絶えんとして苦しみ喘いでいるのは、この地球自身だよ、観客のあなたも加害者なんだよ、そう気づかせようとして、エンタテイメントとしておもしろく作ってあるが、主張は痛烈である。あなた自身に突きつけられた問いかけである。
原一男映画監督
食品の裏側を見るのは当たり前。
それでも気が付かないことがたくさんあるということ。
私たちの体は毎日食べているものでできています。
食物が育った環境、どう育まれたかも、そのエネルギーは必ず体に影響を及ぼします。
だからこそ、この地球でどう生きていきたいのか、
根本的に考え直す必要があります。
嘘を見抜く力が必要であるということが哀しい現実ですが、
心穏やかに優しさ、思いやりに溢れる人になれるように、
手作りで安心安全な食事ができる環境を作っていきたいですね。
室谷真由美モデル・ビューティーフード研究家
こういう解決策が提示された時に、自分はそれを受け入れることができるのか、というところでいつも考えが止まってしまう。そんな躊躇をあざ笑い叩きのめす現実の映像が続く。抗う民衆と強欲資本主義。しかし、単純化しすぎていないか?白と黒をはっきりさせるためにグラデーションが省かれてしまっている。実際にアブラヤシ産業の恩恵を受けて裕福になっている村民がいたり、それなりに国全体がやはり豊かになっているという現実がある。現場からの映像に迫力があるのも事実だ。
中西 宣夫ボルネオ保全トラスト・ジャパン理事