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223569_10150173692183509_1335615_n石川淳哉 SOCIAL VALUE PRODUCER
この映画の主人公のもう一つの未来は、2015年シリア代表のゴールキーパーとしてピッチで戦っていたという未来だ。アジアで二番目と評価されていた彼は、武器の代わりにサッカーボールを手に、シリア国家の威信をかけて国を代表して戦っていたに違いない。ところが、現実は違う。銃を持ち、バズーカを抱え、地下壕を堀り、まさかのシリア正規軍と戦うという現実だ。
印象的なカットがあった。銃弾が飛び交うアジトの廊下、疲れ果てた彼は銃を抱えたまま座り込み泥のような眠りを貪る。銃弾の痕だらけの廊下に日が差し込み粉塵が白く浮き彫りになる。そこにいたのは、燃え尽きて灰になった矢吹ジョーだった。(全文はこちら


11289387_10153281729594494_6907886629620771617_o安田菜津紀 フォトジャーナリスト
「なぜジャーナリストは危険な場所へ?」そんな声を度々耳にする。私たちはなぜ、その場所が危険だということを知っているのだろう。それは誰かがこうしてぎりぎりのせめぎ合いの中で、伝え続けてくれたから。

今日もニュースに、たくさんの数字が飛び交う。爆撃の数、傷ついた人の数、命を奪われた人の数。

数字では決して伝えられない、人の痛み、悲しみ。誰が最も傷ついているのか見逃さないように。そんなメッセージが、映画いっぱいに込められている。


1525239_452490768190534_232554826_n亀山ののこ フォトグラファー

怒り、悲しみ、絶望、恐怖。言葉にならない。すべて同時代に起きていること。小さなカメラで命がけで撮られた、貴重な貴重なドキュメント。
バセットも、カメラに映ったあの若者もみんな、安心して眠り、家族とご飯をたべ、笑って暮らす、そんな当たり前の権利があるはずだ。でもそれが、当たり前なのか?と思わされる。私たちは今、どれだけ幸せなんだ。手放しちゃいけない。手放しちゃいけない。戦争と武力を蜂起した憲法9条。平和には武器も軍もいらない。
バセットたちが安心して休める日が、ふるさとで暮らせる日が一日も早く訪れることを望む。戦争のない世界を望む。どうか多くの人に観てもらいたい、そう思います。(全文はこちら


11002596_951674351511417_4008955418726876716_n水野誠一 Think the Earth 理事長/元参議院議員

リアリティそのものの生の映像が凄い。その中に、恐ろしさや悲しさ以上に、大きなショックを与えられたシーンがあった。それは、サッカーのヒーローのバセットとカメラマンのオサマ。2人は非暴力の民主化運動のリーダーだったはずなのに、アサド政権の攻撃で負傷したオサマが入院先から町に戻ってみると、バセットが銃を持って闘い始めていたことに大きなショックを受けるシーンだ。誰が、何のために彼らに武器を与えたのか?・・世界で止むことのない諍いの無限連鎖は、一体誰を利しているのか?これを機に考えさせられてしまう。


staff_ueda上田壮一 Think the Earth理事

ある日本の学生が「僕は戦争になったら闘いますよ」と明るく言うのでびっくりしたことがある。この映画に出てくるシリアの若者たちは、闘うことに自ら引きずりこまれ、途中で武器を持つようになって(持たされて)からは、引き返すことのできない、悲しい道をひたすら歩むことになっていく。命がけで撮影された映像は、今も続く紛争地のリアルを心に突きつけてくる。戦争は愛も希望も命も全ての人から奪っていく。やりきれない思いでいっぱいになる。これが日本の若者の未来の姿と重なってはならない。そのことを、強く強く、考えなければならないと思った。


1548010_10152695413652230_8601528370606843120_o高遠菜穂子 イラク支援ボランティア

私たちが目撃すべきは、戦場と化したシリアじゃない。そこに至るまでの過程なのだ。平和主義者が銃弾に倒れ、歌って踊るデモが流血に染まり、必死に映像を届けようとする若者たちに私たちはどうリアクションしたか?世界は殺戮を止めるために全力を尽くしたか?そう問い詰められる強烈な映像の連続に息をのむ。

 


profile_mainphoto_sahel_02サヘル・ローズ 女優

革命を起こそう、国を変えようと、立ち上がった少年が、周りの環境によって、武器を手にするようになる。怖いのは、一度人を撃ったら、二度目はためらわなくなっていること。次第に目の輝きも表情も失われていきます。彼は今どうしているのでしょう。そしてシリアは今どうなっているのでしょう。
私の母国イランでは、戦争から年月が経った今でも、傷は癒えていません。すべてを失ってしまったら、そう簡単に元には戻れない。漢字で表せばたった2文字の「戦争」ですが、それが植え付けるものは計り知れません。
日本も今「平和」の守り方が変わろうとしています。この映画を観て、これまで日本が築いてきた「平和」をもう一度考えませんか。


11760447_814399662000838_823339705_o元日本代表/オランダ VVV VENLO 藤田俊哉

1年前、シリアから来たコーチと出会った。彼は平和にスポーツに打ち込みたいからオランダに来たと教えてくれた。何気なく聞いていた、その言葉の意味がこの映画によってより理解できるようになった。彼と約束した!いつの日かお互いの国を率いて対戦しようと…心から平和を願う!そしてスポーツの力を信じている!
 


11733660_814675538639917_1016981405_oサッカージャーナリスト 森雅史

2015年10月のシリア対日本は、シリア国内が政情不安ということでオマーンで開催されることになった。そのシリアの政情不安は、日本が対戦していたかもしれないGKのキャリアを奪った。いつも陽気に歌うGKバセットは、リーダーシップがあるばかりに、いつの間にか反政府軍の1人のリーダーとなる。歌って踊っていたデモは、いつしか銃を手に持ち、自国民同士で殺し合うゲリラ活動に変わる。
選手に戻るタイミングを捨てたバセットは、戦闘で2度足を撃たれる。指導者になることも諦めた。U-22日本代表と同世代のGKは、自国民の夢を託されて他国のチームと戦うはずだった。ところが今、自国民から命を狙われている。いつかバセットが弾幕を張らずにスタジアムへ戻ることができるのだろうか。
10月のシリア戦で日本と対峙していたかもしれないGKの、あまりにも悲しいストーリー。


11760516_815333438574127_671190298_o朝日新聞スポーツ部 後藤太輔

2008年9月、サッカーのガンバ大阪対アルカラマの試合取材で訪れたホムスで見たのは、静かな夜の街で友人と談笑し食事を楽しむ人々だった。しかしこの映像は、同じ街、人とは思えない光景を映し出す。家族や仲間が撃たれ亡くなり、若者はボールではなく銃を求めるようになる。
 憎しみの連鎖に陥ってしまうと、当たり前だったことが簡単に失われてしまうのだと思い知らされた。友の笑顔や死を意識しない夜が奪われる。自分には起こりえないことだとは、決して言い切れない。