9月28日(日)kino cinéma新宿にて映画『キス・ザ・フューチャー』上映後トークゲストにアコースティックギターを弾きながらラップする日本ヒップホップ界のリビングレジェンド、ラッパーのGAKU-MCさんをお迎えしました。
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武村貴世子さん(以下 武村 敬称略): “ラップで世界をプラスの方向に”を合言葉にアコースティックギターを弾きながらラップする日本ヒップホップ界のリビング レジェンド、ラッパーのGAKU-MCさんをお迎えします。本日はどうぞ宜しくお願いいたします!
GAKU-MCさん(以下 GAKU-MC 敬称略):こんにちは!宜しくお願いいたします。
武村:超お久しぶりです。
GAKU-MC:はい、お世話になっていました。ありがとうございます。
武村:かつてGAKUさんの楽曲にも参加させていただいた御縁がございました。
GAKU-MC:20年ぶりくらいです。
武村:はい、宜しくお願いします!さあ早速ですが、映画をご覧になった皆さんから拍手が挙がっておりましたが、この映画をご覧になってどうでした?
GAKU-MC:僕は、すごく良いタイミングにこの映画を、ちょっと前に観たんですけれども、今この世の中がきな臭いじゃないですか。みんなが世界を良くしようとしている中で、ふと観た映画だったので、もっと早く観たかったなという思いもありましたし、この世界情勢のタイミングとボノのメッセージがすごく胸に刺さったなという印象でしたね。
武村:最初は「あ、過去のことを伝えるドキュメンタリーかな」と思って来た方多いと思うんですけれども、もう観終わった後だとお気づきのとおり、今のことですよね。
GAKU-MC:今ですね。
武村:特にGAKUさんが印象的だったシーン、エピソードはありますか。
GAKU-MC:僕はヒップホップという音楽をもう長きにわたって生業としてまして、音楽で皆さんと繋がっていこうと活動しているんですけれども、この大変な地域に住んでいる皆さんが、それでも笑顔を取り戻していこうと、音楽を嗜んで、結婚式をやって、ファッションショーをやってと、そういうことを生活の糧にしているようなシーンを観たときに、すごく良かったというか、ほっとしたという感じがありました。
武村:戦いが起きていても、人々の日常って続いているんですよね。
GAKU-MC:続いていますよね。まさにそんなものが垣間見られ、当時のサラエボの状況はうっすらとしか覚えていなかったので、そういう意味もあり背筋が伸びました。
武村:今回、U2が1997年9月23日にライブを行うところまでが描かれていくのですが、U2は80年代から活躍しているバンドですが、GAKU-MCとU2…。
GAKU-MC:(笑)僕ね、高校二年生の時、カナダに一ヶ月留学してホームステイしていて、その時も毎日カナダのバンクーバーでU2の曲がかかっていたので、最初カナダのバンドなのかなと思っていたぐらいで。今は、U2が今現在もトップランナーとして活躍しているバンドということももちろん知っていますし、好きな曲も沢山あります。そのトップランナーが音楽のモチベーションとして、世界に住む人たちと「みんな、良くなっていこうぜ」というメッセージを発信していることに対して、すごくリスペクトというか、とても良かったなと感じています。トップミュージシャンの一人であるということよりも、そういうモチベーションで音楽を「やっているんだ、やらなきゃいけないんだ」というスタンスで多くのミュージシャンにも影響を与え続けている。だからなんというか、規模は全然違いますけど、同業者の一人として見習いたい、見習うべき存在なのかなと思いました。
武村:やっぱり続けているってすごいですよね。
GAKU-MC:そうですね。しかもU2は、バンドとしてずっと続いていて、目指すところがブレていないというところも含めて、本当に尊敬しています。
武村:ライブの中で、サラエボの人たちの声を映像で伝えるじゃないですか。ライブの演出にあれを盛り込むというのはすごいことだと私は思っているんですけれども、数多くのライブをされているGAKUさんから見て、あのような演出はどう思いましたか。
GAKU-MC:音楽の中に宗教とか、国と国との争い事について入れる必要って本来無いわけじゃないですか。それを入れていくと、一部ハレーションが起きますよね。「何でそんなことをするんだ」というか、「純粋に音楽を楽しみたい」と思ってステージを観に来ているの観客は現実に引き戻されるわけで、それでも敢えて入れているというのは、やっぱり彼らの力強いメッセージを感じましたし、或いは演出することによって、みんながライブから帰って、どういう風に日常を暮らしていかなきゃいけないのかという、ある種ボノらしいメッセージでもあるので。やっぱりすごく危険ではあるんですよね、自分の音楽にそういうメッセージを取り込むというのは。でもそれをやっているというのは、彼らのスタンスというのを明確に感じられたなと思いました。
武村:そうなんですよね。やりたいという気持ちでやっていく。でもやっぱりアーティスト自身も傷つくこともあると思うんです。この映画でもボノ自身が傷つくじゃないですか。それでも続けていくというところが、この映画の凄さなのかなと私は感じていて。やっぱり実際に戦下の人たちは「私たちのこと忘れちゃうんでしょ」みたいなことがいっぱい出てくると思うんですが、彼らは最後まで見捨てないんですよね。それが大きな力になっていて、最後のライブシーンにつながるんじゃないかと思いました。
GAKU-MC:ライブシーン良かったですよね。
武村:言葉は通じないかもしれないけれど、あのライブの感動ってわかりますよね。
GAKU-MC:わかりますよね。本当にもうカラッカラの、走った後の一杯の水みたいな。あの水美味しいじゃないですか。ああいうなんていうんですかね、自分たちの生活の中に彩りが全く無かった中で「待ちに待った時が来た」と。あのトラックの映像が僕すごい好きだったんですよね。ライブ用の機材を積んだトラックが町に入っていった時にみんながね、あれを見て震えている姿、これはもう本当に素晴らしい映像だなと思いました。
武村:ボノがやりたいと言っても、やっぱりバンドメンバーとスタッフの思いも一致しないとできないことを、一つにしたんです。その瞬間があのトラックの映像だと思うんですよね。
GAKU-MC:あの規模のライブになると、関わっているスタッフも何十人とかのレベルじゃないですよね。国境を越えて、機材も運ばなきゃいけない。
武村:危険があるかもしれない。
GAKU-MC:戦下だったということもありますし、人員の確保や、人員のさらにその家族がいるわけで。あのライブやることのリスクって本当にとてつもなくあったと思うんです。でもそれ以上にその思いを届けたいというのが、いちミュージシャンの発案だということに、本当に僕らとしても勇気をもらったなという思いでした。
武村:そして大きなスタジアムで一つになる、まさに「ワン」という曲が、彼らが作った以上にさらに意味をもつ曲になったじゃないかなと思うんですよね。
GAKU-MC:ライブシーンを観て、みんながああいう空気になったというのはね、もう本当に素晴らしい。うまく喋れなくてすみませんけど、良いライブシーンだったなと思いましたね。
武村:本当にさまざまな人たちがいて、分断されていた人たちがまた一つにまとまった、それは音楽があったからこそというところで、音楽ってそういう分断や、違いをふっと越えられる力がやっぱり大きいんだなということを私自身は改めて感じました。
GAKU-MC:やっぱり言葉の壁を音楽はふっと越えていきますし、スポーツももちろんそうですけれども、メロディーが皆さんの心に染み渡っていく瞬間というのが、如実に見えたシーンだったと思います。
武村:そして音楽とともに印象的なシーンやメッセージが出てきますね。GAKUさんは本当にずっと言葉や、人の思いというのを大切にされている方だと思うんですけれども、人々が映画の中で語る姿、メッセージをご覧になってどんなことを感じられましたか。
GAKU-MC:やっぱりみんなそれぞれの思いがあって、色々な立場の違いがあってあのインタビューに出てたと思います。その厚みが、映画でよくできてたなと思っていて。トップスターのU2のような誰もが知っている人の言葉と、無もなき町の人の声があったり、まさにあのタイミングで幸せになっていこうと結婚をしたり、大変なところに住んでいる人たちですけど、その辺の色々な言葉のパズルが、映画をより奥底まで、深みをもって描けていたんじゃないかなと思いましたね。
武村:一人ひとりの物語がひしひしと伝わってきて、その思いが一つになっていくところも、この映画の力は感じますよね。
GAKU-MC:感じました。だから本当に、今の世界の人たちに観てもらいたいと思います。
武村:本当にそうですね。この映画をご覧になってから色々なニュースとかを見ると恐らく、見方に少し変化があるんじゃないかなと思うんですよね。
GAKU-MC:たしかに。
武村:その変化を皆さんの中で感じていただけたらなと思います。
GAKU-MC:あと、やっぱり一緒に観た人同士が話すのもいいですよね。僕は子どもが3人いて、まだ一番下の子とかはこの映画はちょっと難しいと思うんですけれど、多分高校生ぐらいの子だったら理解できる範囲だと思うので。そういう大切な人と一緒に観て、じゃあ僕らは今の世の中と照らし合わせて世界をどう見るのかみたいな話ができたら素敵かなと思いました。
武村:語り合うことで伝わっていきますよね。世界に対して私は何もできない、どうしたら良いんだろうって悩まれる方が多いと思うんですけれど、まずは身近な人と語るところからだと思うんですよね。
GAKU-MC:大事だと思います。
武村:。GAKUさんもさまざまな社会や世界に関わる活動をされていて、2012年から「アカリトライブ」をスタート、そして音楽とフットボールを通じて人々をつなげることを目的とした団体MIFAも続けていらっしゃいますが、現在GAKUさんはどういった活動を継続されているでしょうか。
GAKU-MC:今日はチームのライブではないので、僕を初めて見てくださる方も多いと思うんですけれども、基本的にはラップミュージックを皆さんに届けて、この音楽の素晴らしさを知っていただきたいと、随分長いことやっております。その中で音楽の目的として、最初僕がラップを始めた時とかは単に「ラップをみんなに好きになってほしいな」、「モテたいな」みたいなところだったんですけど、長いことやっていると、僕らが音楽をやっていることで誰かに幸せになってほしい、笑顔になってほしいという思いが生まれてきました。2011年、東日本大震災があった年からは音楽で皆さんと繋がって、被災地の皆さんにも笑顔を届けたいという思いで、それに特化した音楽イベントをずっと開催しています。それを「アカリトライブ」キャンドルの光と音声というものでやっておりまして、年に1、2回色々なアーティストとコラボしながら、お客さんにキャンドルホルダーにメッセージを書いていただいて、被災地に届けるという活動を続けています。また、僕は自分の趣味がフットボール、サッカーなので、今でも週に2回くらいはサッカーやっているんですが、Mr.Childrenの櫻井と一緒に別ユニットみたいなものもやっていまして、これはサッカーを応援するグループです。今、サッカー日本代表の応援ソングも担当しています。東京の豊洲、立川と仙台と福岡でサッカー場の運営もしてまして、日々子どもから大人までそこで汗を流して、僕らもそこでサッカーしたり、音楽イベントをやったりしています。
武村:私も難民支援活動をしていると感じますが、音楽と一緒で、スポーツってすごく皆が繋がれるんですよね。
GAKU-MC:そうですね。スポーツは沢山練習して準備しても勝ち負けがあったりと、色々不確定要素が多い中でもそこに向かって走っていく。そういう時間がとても好きで、日々思い通りにならないサッカーボールを相手に、対峙しながら楽しくやっています。
武村:ミュージシャンとして、こういった社会と関わる活動を継続しているってすごいことだと思うんです。続けるには、本当にこの映画の中のように色々な困難もあると思うんですけれども、続けてこられている原動力って何ですか。
GAKU-MC:もしかしたらですよ、ボノも同じことを考えてるんじゃないかなって一瞬思ったシーンがあったんです。やっぱり、音楽やってる以上、誰かの役に立ちたいと思う時があるんですよね。誰かの役に立ちたい。それは自分がこの音楽好きだから、でやるだけはなくて、聴いた人がハッピーな気持ちになるとか、実際に笑顔になる人を沢山見てきたからこそ、自分たちの音楽がちょっとでも誰かのお役に立ったら良いなというのが、今は本当に根底にあって。それは「かっこいい」と言ってもらいたいとかそういうことじゃなくて、僕が音楽をやることによって、皆さんが日々の生活の中で笑顔になってくれればそれで良いなと。そういう思いがきっとボノにもあるんじゃないかな。自分たちが歌うことによって、戦禍で涙を流した人に笑顔になってほしいとか。もちろん規模は違いますけれども、そういうところがモチベーションになってるんじゃないかなと思いながら、映画を観てましたね。
武村:そういう人たちがこの世界にたくさんいることが大きな力になっていくんじゃないかなと思います。
GAKU-MC:もう誰かの役に立てたらね。職業違いますけれども、皆さんもきっとお仕事のモチベーションって生活費稼ぐっていうだけじゃなくて、誰かの役に立てたとき、なんかすごくプライドを持って暮らせるじゃないですか。それと同じで、僕も皆さんと同じように社会の役に立てたら良いなという風に思っています。
武村:改めて今回の映画をご覧になっていただいて、GAKUさんのこれからの活動、未来に向けて何かヒントになるところはございましたか。
GAKU-MC:そうですね。僕も、もっとよりよく、暮らしやすく、物事がすべて対話で着地できるような世界を望む一人として、この映画を沢山の人に観ていただきたい、もっと世界が良くなってほしいと思いますし、自分がこれから何か創造的な、クリエイティブな活動をするときに、一人でも多くの人が優しい気持ちになって、諍いのない暮らしに繋がっていけるような、何かそういうものを生み出していきたいなと強く強く思うようになった次第です。
武村:残念ながら、この映画の撮られていた1997年代よりも、今の2025年の方が世界で故郷を追われている人たちって一番多いんですね。第二次世界大戦時が最も多く、1億2000万人以上と言われている中で、やっぱり私たちが今考えて、一人ひとりが“問い”を立ててできることって、まだまだあると思うんです。その中でやっぱり“音楽の力“というのを今日皆さんにも感じていただけたと思いますが、GAKUさん、音楽の力というのは改めてどんな力があると思いますか。
GAKU-MC:そうですね、やっぱり日々ちょっと白黒っぽい生活を彩っていく瞬間を作れるということじゃないですかね。皆さんの生活の糧になるような、お米とパンとまではいかないにしても、自分が作ったものがちょっとしたアクセントになれるように、これからも頑張っていきますので、もしどこかでお耳にするタイミングがあったら、ぜひ聴いてみてください。宜しくお願いいたします。
武村:GAKUさんの音楽に私も力をもらっていました。改めて、皆さんにGAKUさんからメッセージをお願いいたします。
GAKU-MC:こういうのも一期一会ですからね、今の時代はネットですから、一旦「GAKU-MC」で検索していただいて、帰りがけにでも聴いていただけると嬉しいです。ありがとうございました。
武村:ありがとうございました。本当にぜひこの機会に、GAKU-MCさんのSNSをフォローしていただいて、一緒にここから新しい一歩を踏み出していければと思います。
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