12月5日(金)に公開となる映画『手に魂を込め、歩いてみれば』をご覧になった、俳優・タレントのサヘル・ローズさんから届いた映画に登場するファトマ・ハッスーナさんへの手紙を公開致します。
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ファトマさんへ
あなたの声が、今も耳元に残っています。
空爆の音の向こうから、あなたは伝え続けていた。
世界が耳を塞ぎ、目を背けている間も、
あなたは、誰かの朝の風景を、焼け跡の中の祈りを、撮り続けていた。
カメラの向こうには、家族がいた。
撮られることに慣れていない、けれど生きることに懸命な、あなたの隣人たちが。
あなたは、もういない。
けれど、あなたのまなざしは残った。
この映画は、あなたが、生きた証。
そして、私たちもまた「生きて語る者」として、
あなたの隣に立つ覚悟を問われているのだと思います。
手のひらに宿る、小さな鼓動。
誰かの涙が乾かぬうちに、
誰かの希望が踏みにじられてしまうこの世界で、
あなたはカメラを握り、日常という名の戦場に立っていた。
「もし死ぬのなら、響き渡る死を望む」
その言葉は、ただの叫びではなく、
世界に届くことを信じた「祈り」だったのだと、
この映画を観て、私は思った。
ガザに生きるということ。
生き延びること、語ること、記録すること。
それが、どれほどの決意と痛みを伴うのか。
撮るという行為が、武器にも盾にもなる。
セピデ監督との1年にわたる対話は、
離れていても魂が手を取り合えるという証。
この映画は、命の火花をそのままスクリーンに映し出している。
ファトマさんのカメラの先には、
私たちの無関心という「暴力」が映り込んでいる。
けれど、あなたの声は今、ここに響いている。
魂をこめて、歩くように
私たちも、あなたの遺したまなざしを、引き継ぎたい。
記憶は、沈黙よりも強い。
映画を観終えたあと、
私はただ、静かに立ち尽くした。
この世界に、沈黙していい死など、一つもないのだと。




