わたしたちの服を作っているのは誰?

現在、わたしたちが身につける衣服の97%は海外(米国の場合)で作られており、これに伴い、わたしたちと服を作る人々とのつながりはますます薄くなっています。世界には現在、服の生産に従事している人々がおよそ4000万人いますが、彼らの多くは欧米諸国の人々と同様の人権を保障されておらず、保護されていません。彼らは、世界でももっとも所得の低い部類に入り、このうち約85%が女性です。アパレル産業におけるヒューマンファクターの問題は無視できない規模のもので、世界中の多くの発展途上国で低賃金労働による搾取や労働者や女性の権利、人権の侵害などの行為が日常的に存在しています。

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グローバリゼーション

ファッション業界は、農業から製造、販売まで多岐にわたり、わたしたちを世界中の多数の人々とつなぐ接点になっています。グローバル化された21世紀の世界において、ファッション業界はもっとも経済的な恩恵を受けてきました。「富めるものが富めば、貧しいものにも自然に富が滴り落ちる」という自由市場の理論を信じることはますます難しくなっており、2015年現在、世界の格差や環境破壊の問題はかつてなく大きなものとなっています。わたしたちは、成長に必要ならば人々や惑星にさえ値札をつけるグローバル化された現在の世界を持続可能なものにしていく方法を考えなければなりません。

ブランド

グローバルなファッションブランドはかつてないほど巨大化しており、各々の年間収入が数十億ドルにもなる3兆ドル産業を構成しています。これらのブランドは、海外での低賃金労働の利用により大きな利益を得続けています。しかし、彼らは同時に、その影響力を自社の従業員のために利用するという、重大な変化を起こす鍵も握っています。買い物客と衣服生産者の関係が希薄化するなかで、自分たちの衣服を作っている労働者に対して、わたしたちがつながりを感じ、これらの労働者や彼らの発言に注意を払っていることをブランドに知らせるのは重要なことです。

使い捨ての衣服

世界では毎年800億ドル分もの新品衣服が購入されており、これは20年前にわたしたちが消費していた金額に比べて400%増加しています。新たな衣服が生活に入ってくるいっぽうで、衣服は驚くべきペースで捨てられています。平均的なアメリカ人は、年間82ポンド(約37kg)の衣類ゴミを捨てており、これによって、米国だけで年間1100万トン以上もの衣類ゴミが出ています。昔は服を長く使ったものでしたが、安価な服が大量に増えたことで、わたしたちは服を使い捨てできるものと考え始めています。

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綿(コットン)

綿は今日の衣服を作るために使用される繊維のおよそ半分を占めています。この綿の90%以上が遺伝子組み換えのもので、大量の水と化学物質が使用されています。綿の生産過程では、世界の農薬の18%、殺虫剤の25%が使用されています。これらの化学物質が土壌や人間の健康に与える影響については十分なテストが行われておらず、綿生産に携わる人々の間では不安が広がっています。人間の皮膚はもっとも大きな器官なので、こういった化学物質は衣服を着る人々の血流のなかに入っていってしまいます。

革の生産が様々な環境や人間の健康に与える影響はますます顕著になりつつあります。革生産のための家畜の育成に必要なえさや土地、水、化石燃料などの量は、わたしたちの世界にとって、大きなコストになっています。家畜に必要な資源のほかにも、革のなめし加工のプロセスは、ファッションのサプライチェーンのなかでももっとも有毒なものです。労働者はこのなかで有害な化学物質にさらされ、発生する廃棄物は水資源を汚染し、周辺地域における病気の増加をもたらしています。研究によれば、革のなめし加工に従事する労働者は20%〜50%癌のリスクが増加するといいます。

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97%
衣服の海外生産率
1100
米国だけで年間1100万トン以上もの衣類ゴミ
90
綿の90%以上が遺伝子組み換え
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グローバルファッションブランドは3兆ドル産業