2021年9月11日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー  ユナイテッドピープル配給

ハッサン一家4人の3つのスマホで撮影されたこの映画は、そのスマホで電話をしているシーンは無い。彼らのスマホは携帯電話ではなく、家族の様子と安住の地を探す過酷な日々を記録する生存証明のようだった。見果てぬ家路の道中で撮影されたスマホ映像の数々は、美しい映画に昇華した。

綿井健陽ジャーナリスト・映画監督

タリバンを描いたドキュメンタリーで死刑宣告を受け、「難民」という出口のない旅に漕ぎ出す監督一家。しかし過酷な逃亡生活を支えたのもまた、妻や娘も撮影者になって、スマホでドキュメンタリーを撮り続ける行為だった。観客は瞬時に家族の一員になり、安住の地に辿り着けない不安と、守るべき者たちの愛おしさを共有するだろう。そして、入管で人の命が奪われるような、世界一「難民」を理解しない日本人の意識をたった87分で完全に変えてしまうだろう。

三上智恵ジャーナリスト・映画監督

パレスチナにシリア、南スーダンにミャンマー、アフガニスタン、そしてクルド。まだまだある。行き場がない難民は世界中にいる。日本にもいる。その彼らを外から撮った映像は何度も観た。でも彼らが撮る彼ら自身を観るのは初めてだ。多くの人に観てほしい。そして考えてほしい。彼らへの直接的な加害者はわかる。でも間接的な加害者は誰なのか。彼らから希望と権利を奪い、追いつめて苦しめているのは誰なのか。

森達也映画監督・作家・明治大学特任教授

こんなリアルなドキュメンタリーは観たことない。処刑への恐怖、祖国を去る絶望、命懸けの逃避行、差別への悲しみ、家族の愛、すべてに壮絶なほどのリアリティがある。

四角大輔NZ在住の執筆家/森の生活者