プラスチックごみで埋め尽くされた海岸、深海に不気味に沈むプラスチック、レジ袋を飲み込んだり絡まったりした生物のリアルな映像から、危機感が伝わってくる。それに加えて、プラスチックに含まれている有害な添加剤やプラスチックが引き寄せてくる化学物質により、海洋生物、そして最終的には我々人間に有害化学物質の危機が迫っていることに警鐘を鳴らす。特に、プラスチック製品自体に添加剤として内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が含まれており、私達がプラスチック製品を使うたびに環境ホルモンに暴露されることが何度も描かれています。「プラスチックはよく回収されリサイクルされているから大丈夫」と思ってプラスチックをたくさん使っている方がいたら、是非観てほしい映画です。たくさんプラスチックを使っているうちに有害な化学物質に暴露されて、体内のホルモンバランスが崩れ、免疫系までおかしくなる、そんな警告を発している映画です。プラスチック汚染は人間の健康の問題なのです。
出演されている科学者はいずれもこの分野で長年研究を進められてきた優れた研究者で、彼らの言葉には説得力があります。環境NGOの活動家も早くからこの問題にとり組んでいる方々で国際的な発言も多くされてきており、彼らの言葉も重みがあります。プラスチックの被害に遭った海の生物の映像は衝撃的である、中でも、オーストラリアやミッドウェー島の海鳥の調査の映像には言葉を失う。プラスチックの破片で海鳥のおなかがぱんぱんにふくれており、人間に換算すると6kg〜8kgという驚くべき量です。それだけの量のプラスチックが体の中に入っていれば、何か有害化学物質が溶け出してくるのではないかと、心配になります。実際に有害な化学物質が出てきていますし、それにより、海鳥の血液に異常が出てきていることもわかってきました。健康影響は海鳥だけではないのです。映画の中では、プラごみに囲まれて暮らしている人に健康被害が出ていて、癌で命を落とす人もいることも紹介されています。まだ、特殊な例かもしれませんが、プラごみが増えるのをこのままにしておいたら、私達にも起こるのではないかと心配になります。問題は多岐に渡り深刻ですが、解決策はあるのです。この映画の最後に出てくる「使い捨てプラスチックを拒否しよう」です。答えは簡単です。レジ袋、ペットボトル、ストロー、ランチボックス、等身の周りの使い捨てのプラスチックを使うのを止めましょう。それが海の生物だけでなく我々自身の身体も守ります。プラスチック・フリーの意義を再認識する映画でした。
東京農工大学大学院 農学研究院 環境資源科学科
教授 高田秀重
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