「種っていうのは、命ですよ。この映画を見てもわかるように、私たちの命の糧は種なんです。命をつなぐのは、種をつないでいくことなんです。」
2月25日に、映画『シード ~生命の糧~』の上映と、山田正彦さん(元農林水産大臣)の講演会を開催しました。講演録から一部をご紹介します。種苗法改定の動きがあり、山田さんは「大事な瀬戸際」と訴えました。
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今度の3月上旬に、種苗法改定案がいよいよ提出されることになった。どういうことかというと、種子の自家増殖禁止になる。実は私は、種子島から夕方帰ってきたが、種子島でサトウキビは収穫して、自家増殖している現場を見てきた。手で刈り取り、いいものを4から5年に一度、穂先のところ2節ぐらいを切り取り、畑に畝を作り埋めていく。これが代々続け、サトウキビで食べてきた。ただそうしても段々質が悪くなるので、農研機構という国の機関が作った黒海道という登録品種を6年に一回ぐらい50本ぐらい買い、また植える。
ところが今度の種苗法改定により、登録品種の自家増殖ができなくなる。これを犯したら、10年以下の罰金、1,000万円、共謀罪の対象に。法人に対しては3億円以下の罰金になる。育成権者から許諾が得られない場合は、毎年苗を買わなければならない。本当にそんなことが起こるなんてありえないという現地の反応だったが、映画でみたように起こりうるんです。
種子島の安納地区に行った。安納芋が伝統的に栽培されてきた地区です。農家と会ってきましたが、みんな「自家採種してきた伝統的な品種は大丈夫です」と言ってますが、この安納芋でも2種類育種登録されているのです。えごまはそれこそ伝統的な昔ながらの日本の格式ある種子です。これだけでも調べたら3種類、育種登録されているんです。もちろん小麦も麦も大豆も。で、そういったものを育種権利者、いわゆる企業の許諾、許可を得ないとつくれない。どういうことかというと、対価を払わなきゃいけないっていうことになるんです。農水省が言ってます。じゃあ育種権利者が許諾しないとなったら、全部苗を買わなきゃいけないのか?そうなります。
シャインマスカットなど優良な品種が海外に出て行くのを防ぐために種苗法の改定は必要だと言うと、みんな納得するような顔するんですが、これは全く違うんです。種子法廃止と同時に、国は農業競争力強化支援法という法律を作りましたが、その8条4項(※)にそういった優良な育種知見、知的財産権を民間に提供を促進するとあるんです。
※種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。
始まりましたよ。農研機構の稲の大変立派な研究家が、民間企業に出向してます。例えばシャインマスカットなどの海外流出を防ぐためと言いながら、全くそれに相反する法律を作った。種苗法21条4項に、輸出の目的をもって海外に流出することは禁止となっている訳です。何も法律を変える必要はないんです。3年前に農水省の知財課の保健所に行っても、「海外に物理的に種子が出ていくことは防ぎようがないが、唯一防ぐためには、海外で育種登録、意匠登録、商標登録するしかない」と述べている訳です。
しかもその次に、もうひとつ大事ことは、伝統的ななめこ茸の栽培農家が、宮城県で裁判になったのですが、企業がある日突然「育種権を侵害したと」訴えてきた。かなりの金額の賠償金です。先程、神奈川の伝統的な菜種油の栽培農家が訴えられて、負けましたね。あれと同じ事が今、もう日本で十数件起きてるんです。ところがその(なめこ茸)農家は勝ったんですよ。なんで勝てたかというと、裁判所は、「確かにそのなめこ茸の持つ特徴、特性表だけから見ると、育種権の侵害にあたるようだが、現物と現物を比較しないと区別の仕様がない」と。企業に現物を出せと言っても出さなかったんです。それで、伝統的ななめこ茸の栽培農家は助かったんです。
でも今回、法律の改正では育種権者、いわば企業の権利を守るために、特徴、特性表だけで裁判で勝てるという法律を改正案に盛り込んだんです。これで伝統的な栽培農家は大丈夫ですってことは、絶対に言えないんですよ。海外に優良な育種知見が流出するのを防ぐためにと、絶対に言えないんですよ。こういう法律がいよいよこの3月に出される。種子法廃止法案は、2年前のちょうど3月に出されて、3月に衆議院通し、5時間の審議で、参議院でやはり5時間の審議で通し、あっという間に通したように今度の3月の上旬のちょっと先に、そういう法案が出されます。
自民党、公明党は、相変わらずこれを3月中に衆議院を通し、4月中に参議院を通すと息巻いているところです。しかし新聞、テレビの報道っていうのは、優良の育種知見を守るために種苗法改正は当然だという報道になる。農業新聞でもね。本当のことが報道されない。これは大変です。種っていうのは、命ですよ。この映画を見てもわかるように、私たちの命の糧は種なんです。命をつなぐのは、種をつないでいくことなんです。それが、種子法が廃止されました。しかし種子法廃止されても、24の道県で、同法に代わる条例ができた。この前群馬県も発表しましたが、従来通り原原種を1年目につくり、2年目に原種をつくり、3年目に種子を作り、4年目にノウハウをつくっていくということが守ることができました。おそらく来年中に32都道府県で、それを作ることができると思います。種子法を廃止されても私たち、新聞、テレビも報道しなかったけど、地方から条例という形で守ることができたのです。
我々は地方から条例をつくれる。この条例は議員さんがつくるものじゃないんですよ。皆さんがつくれるんです。皆さんで、例えばそのまちの1/50の有権者の署名集めたら住民提案で住民投票による法律がつくれるんです。
沖縄で、比嘉さんというあるお母さんですが、喫茶店みたいなところで本の貸し出しをしてました。そこで種の貸し出しませんかって言ったら、半年で種子ライブラリーができましたよ。小さな活動なんです。でもみんなで種の交換できるような、貸し出しができるような、店員さんつくってますよ。広島県のジーンバンク、皆さん見に行ってください。これは2年くらいで廃止されそうなんで大変心配しております。 かつて30年前に広島県の知事が、98%の種が消えていくと言った。日本からもですよ。農家が種採りしなくなった。私も戦争中に生まれましたから、化学肥料とか農薬でたのは、65年ぐらい前まではなかったんですよ、全く。そういう意味で、私たちにとって、今、大事な大事な瀬戸際です。これは、種を守る、種を守ることのできる、そういう意味で、こういう大事な映画をどんどんやっていただければと思います。
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