ギリシャに住んでいた頃からレバノンは憧れの地だった。
あんなに緑と人と食べ物が魅力的なところは他にない。だからみんなが奪い合って戦争になる。
しかし、ある種の人間にとってワイン作りの情熱は砲弾よりも強いのだ。神々はワインを通じて祝福を与える一方、戦争という試練も与える。
それを超えて至福の味が生まれる。
池澤夏樹
戦火のなかでも未来のために葡萄の木を植え、ワインをつくりつづけた。レバノンの不屈の民と、エリザベス・ギルバートが「心の師匠」と仰ぐ人の人生哲学に胸打たれる。
那波かおりエリザベス・ギルバート著『食べて、祈って、恋をして』訳者
ブドウと太陽さえあれば、どんな土地でもワインはできる。ワインに国境はない。レバノンの造り手たちは開放的で、セルジュ・ホシャールは明るい哲学者だった。
国家という枠組みがあるから、国境が築かれ、戦争が始まる。ブドウは紛争とは無縁に育ち、人間に喜びを与えてくれる。
天と地と人が創るワインの生命力をこの映画は教えてくれる。
山本昭彦ワインジャーナリスト
レバノンワインを飲んでからこの映画を観るか、この映画を観てからレバノンワインを飲むか。メソポタミア文明からつながる歴史と文化、度重なる戦乱の苦難と願い、そして銃弾や爆撃の匂いまで、レバノンワインに注ぎ込まれた人々の情熱と魂の深さを知る。その一杯、一口の向こうに、苦渋も味わいもブドウ畑も広がる。
綿井健陽ジャーナリスト・映画監督