「サーフィンを愛するもの同士は共に暮すことが出来る」
これは伝説のサーファー、ドリアン “ドック”パスコウィッツの言葉です。彼はアメリカで生まれたユダヤ人で、スタンフォード大学の医学部を卒業した後に、ハワイへ移住。以後、サーフィンをこよなく愛し、全米をキャンピングカーで家族と暮らしながら旅します。設立した「パスコウィッツ・サーフスクール」は現在も運営されています。
彼は1950年代にイスラエルに行き、初めてサーフィンを伝えた人物ですが、2007年、ロサンゼルス・タイムズ紙の記事で、ガザのサーファーたちが、たった1枚のサーフボードを共有している窮状を知りました。ドックはイスラエルのサーフィン会社から中古のサーフボードを14枚集めてガザのサーフコミュニティに寄付しました。
ガザにサーフボードを届けるために必要な許可を得ていましたが、イスラエルとガザの境界、エレツ検問所でイスラエル当局が搬入を拒否。ドックは「向こう側にこのボードを必要としている友達がいる。撃てるものなら撃ってみろ」とサーフボードを抱えてガザに向かっていったのです。ドックの強情さに当局が折れ、無事サーブボードが寄贈され、このことは世界中の新聞、雑誌に掲載されました。
写真出典:サーフィン4ピース ヒストリーより
ガザにサーフボードを届ける数年前、2004年にはイスラエル・アラブ人のための初のサーフコンテストを成功させ、その際ドックがサーフボードを寄贈したことから、慈善団体「サーフィン4ピース」が生まれています。
その後ドックはミューシャンの息子たちも参加する平和と共存を訴えるためのピースコンサートをイスラエルのテルアビブで開催し3,000人を集める成功を収めています。
映画『ガザ・サーフ・クラブ』に登場するアメリカ人、マシュー・オルセンはサーフィン4ピースのアンバサダーであり、Explore Corpsの創設者です。マシューはガザの人々と「ガザ・サーフ・クラブ」を設立しており、その後、「サーフィン4ピース」や別に立ち上がった「ガザ・サーフ・リリーフ」の協力により、更に数十本のサーフボードがガザのサーファーたちに寄贈されました。映画『ガザ・サーフ・クラブ』は、こういった国境や宗教を超えた善意によって生まれたガザのサーフコミュニティの人々を紹介しています。
参考:サーフィン4ピースの使命
サーフィン4ピースは、中東や世界中の多様なコミュニティに住むサーファー同士の文化的・政治的な障壁を埋めることを目的とした、個人対個人の、国境を越えた協力活動です。
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