11月19日(土)アップリンク吉祥寺にて『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』上映後トークにソムリエ・ワインディレクターとしてご活躍中の田邉 公一さんが登壇して下さいました。当日のトーク内容を一部ご紹介致します。
Q.映画の感想をお願いします。
2016年11月にレバノンのワイナリーを初訪問しました。日本のワイン関係者でレバノンに行かれた方は少ないと思います。空港に着いた時、フランスやイタリア、ギリシャとは雰囲気が違うと思いました。街並みが美しく、その点は聞いていた通りでしたが雰囲気が違いました。1週間ほど滞在し、映画でこの国の歴史を振り返ることで、戦争やワインについて深く考えさせられました。
Q.訪問されたワイナリーで印象的だったワイナリーは?
10年前から推しているワインがありまして、ドメーヌ・デ・トゥーレルです。映画ではファウージ・イッサさんが登場しますが、現地でお会いすることが出来ました。もう一つはシャトー・クーリーです。非常に素晴らしいワインでとてもエレガント。レバノンにしかないワインだと思っています。この2つのワイナリーですね。
Q.レバノンワインの特徴は?
レバノンは地中海に面しているのですが、独特の地形なんです。ブドウ畑、海から急激に標高が上がった1,000メートルぐらいのところにあります。テロワールという意味ではかなり独自性があります。ただ、フランスの影響は受けていて、ドメーヌ・デ・トゥーレルもシャトー・クーリーも造っている方の雰囲気がフランス人ぽいですし、フランス語も通じます。品種はサンソ―とか、アルザスの品種が人気。リースリング、ゲヴュルツトラミネール、シャルドネを混ぜることも。ヴィオニエをアッサンブラージュして造っている生産者もいて、他にはない独自性があります。
映画ではシャトー・ミュザールが出てきます。シャルドネの祖先といわれるオバイデ。セミヨンの祖先といわれるメルワ。メルワとオバイデをブレンドして造るシャトー・ミュザールの白は他にはない、世界的に評価を受けているワインです。雰囲気としてはフランス寄り、ヨーロッパ寄りのワインですが、ここにしかない独自性があるワインだと思います。
Q.10年前からレバノンワインに注目していた理由は?
2012年に新しいレストランを表参道にオープンしたのですが、全部の料理にすべて違うタイプ、違う世界のワインを提供したかったんですね。例えば、ロゼ、白、泡などですが、全て供出するグラスの形状も変えました。そんな時にソムリエの友人から「レバノンワインに興味ありますか?」と電話がかかってきたんです。正直レバノンワインはこれまで飲んだことがありませんでした。ソムリエ教本にも載っていませんし、レバノンワインについて語ったこともなかった。ですから「えっ?」って思ったんです。でも彼のことを信頼していたので、その後インポーターさんとお会いし、実際に試飲してみたんです。
ポリシーとして、常に平等にフラットな気持ちでワインをテイスティングするようにしています。それで良いと思ったのが、ドメーヌ・デ・トゥーレルとシャトー・クーリーでした。レストランではゲストに新しい発見をもたらしたいと思っていたので紹介を開始したんです。例えばロゼは地中海系の料理に合わせました。なかなか反応が良かったです。
Q.レバノンワインはどんな料理と合いますか?
地中海性気候ということで、ワインが生まれる場所にある食材を意識しています。レバノンに行った時、ギリシャ料理に似ていたんですね。ヴィネガー、オリーブオイルをたくさん使いますし、肉料理よりも酸味のある野菜料理が多かった。こういった視点でペアリングしていくと面白い。ギリシャ料理的な、トマト、ナス、ひき肉を使ったムサカなんかもいいでしょう。あと、海が近いレバノンはサンソ―から造られた赤ワインもいい。軽やかなタイプのサンソ―は赤身の魚に合うと思います。
Q.最後のメッセージ
映画を観てワインってすごいと思いました。戦争がありながらも生産が続いていることや、ワインが人を元気にしてくれることが、今回の映画を通してあらためてわかりました。そして、僕らは恵まれているなと。この日本においてワインを大事に飲んでいきたいですし、広めていきたいと思いました。皆さんもぜひまだの方はレバノンワインを飲んでいただきたいです。
田邉 公一 プロフィール
ソムリエ・ワインディレクター。「タイソンズアンドカンパニー」「マイアムワイン」「ロワン」「アフリカー」「麻布とさか」等のレストランやワインショップ、イベントのワイン、飲料の監修を手掛ける。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」でワインや日本酒の講師、飲料のセレクターを務める。今秋公開の映画「シグナチャー」ソムリエ役として出演。
第6回キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエ コンテスト優勝。
10年前からレバノンワインに注目し、レストランでゲストにサーヴしてきた経験をもつ。2016年11月にレバノンの現地ワイナリーを訪問。
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