1月14日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショーとなる『コペンハーゲンに山を』。
ライケ・セリン・フォクダル監督、キャスパー・アストラップ・シュローダー監督にインタビューを行いましたのでお届け致します。
Q.映画製作を思い立ったきっかけは?
(シュローダー監督)映画にするアイデアは、発電所の建設側からです。建設のプロセスを映画にしたら面白いのではないかと。何年も撮影した映像を私に渡し、映画化をオファーされたんです。映像を手に入れると、400時間ものフッテージがありましたが、ミーティングや建設の様子などすべてを記録した映像です。これは大変だと思い、幾つもドキュメンタリー映画の編集を手掛けているライケに力になってくれるか相談しました。彼女は素晴らしいアイデアを多数出してくれたので、共同監督になってもらいました。
Q.400時間もの映像から映画化、さぞ大変だったでしょうね。
(フォクダル監督)映像は手持ちカメラで1つの会議を4時間撮影したようなものが多かったんです。音も上手く録れていません。市との調整や資金調達の様子など様々な難しいミーティングの様子はほぼ使わない選択をしました。そして、主人公を建物にすることにしたのです。そこで建物にズームインする映像など様々なアングルで建物を撮影しました。
(シュローダー監督)それからビャルケのインタビューを加えました。400時間のすべてを見る選択はせず、建物を主人公にし、建物が出来上がっていくクリエイティブなプロセスに集中することにしたのです。ご覧の通りこの建物は巨大ですよね。そして発電所の屋根にスキー場を併設するなんて極めてクレイジーです。このスケールの大きさを伝えるための撮影でしたし、音楽もドラマティックなものを選択しました。
Q.映画のテンポが使用されているクラシック音楽と合いとても好きです。どのように選んだんですか?
(シュローダー監督)1本の映画としてのある種の一体感を生み出すためにも、選択したのはたった一つの曲なんです(ニコライ・リムスキー=コルサコフ交響組曲『シェヘラザード』(作品35))。
(フォクダル監督)使用したのは曲の後半の部分ですが、シンフォニーと順番を変えずに使用しました。音楽はこの映画の魅力の一つですが、音楽を聞かせたいシーンでは、建物を2分間ズームする映像をぶつけました。
Q.映画制作中、難しかった点は?
(フォクダル監督)クライミングウォールの設置が大幅に遅れたことです。映画には入れられないかもしれないと心配しましたが、何とか一冬待ち、撮影できました。
(シュローダー監督)400時間の映像入りのハードドライブを受け取った時は「どうしよう?」と思いましたね。最初から映画を企画して制作に入るプロセスとは異なるプロセスでこの映画は始まりましたから。最も難しかったのはビャルケのスケジュールを抑えることでした。「1時間ならいいよ」と何とか彼のハウスボートで撮影できました。
(フォクダル監督)良かったのはキャスパーが個人的にビャルケと友達だから、彼のビャルケのビジョナリーな考え方を理解した上で進められたことです。
(シュローダー監督)僕の妻が20年前に彼の会社でインターンを始めたことで、縁が出来て彼の過去の作品を撮影したんです。その後幾つかのプロジェクトで一緒に仕事しているうちに友人になったんです。ビールを飲んだりね(笑)。
Q.ビャルケの発想のスケール感には驚かされます。常に映画中のような調子なんですか?
(シュローダー監督)そうです。無数のアイデアの持ち主でクリエイティブです。いつも常識にとらわれない発想をしています。でも彼は他人の意見を聞くことにも長けていますよ。利用者側の視点も持っているからコペンヒルの発想が出来たんです。「この発電所に出来るだけ沢山の人に来てもらうには?」という視点からクライミングウォールとスキー場を併設することを思いついたんです。尋常じゃない発想力ですよね。そして彼の発想を実現出来る資金を持っている人も見つけられるんです。最初の頃のデンマークでの彼の受け止め方は、「夢ばかり語って、そんな夢想が実現するわけないだろう」と否定的に受け止められていましたが、一度成功すると「すごいじゃないか」と態度が一変しました。
Q.制作中最も感動したことは?
(シュローダー監督)ビャルケのアイデアは楽しいけど、スキーを滑ることなんて実際には出来ないのではないかと疑っていました。完成したとしても誰も利用しないのではないかとも。でも完成後に沢山の人々が利用していることを観て、驚きました。
(フォクダル監督)ほとんどすべてのコペンハーゲン住民があの建物のスロープを登ったと思いますよ。スキーは有料ですが公園として公開されているので無料で登ることが出来るんです。
(シュローダー監督)一度、上に登ったら「すごい!信じられない!」と感動しますよ。
(フォクダル監督)コペンハーゲンの人々の心を鷲掴みにしました。空気を汚染しない、グリーンでサステナブルな施設ですからこの点もとても評価されました。教育施設としても機能していて学校からの見学に来る生徒が絶えません。
(シュローダー監督)建物の一部分を教育に使うことを最初から設計していたんです。
Q.日本の観客へのメッセージをお願いします。
(シュローダー監督)『コペンハーゲンに山を』は、コペンハーゲンに建設された発電所であるだけでなく、スキー場や世界で最も高いところにあるクライミングウォールが設置されている施設を紹介します。この映画が未来を担う世代に勇気を与えるものであることを願っています。私たちが出すゴミを活用する新しいアイデアを学んでください。私たち人類はかつてないほどゴミを出しています。ゴミをどう処分するか考えなければなりません。ビャルケが考えたコペンヒルからインスピレーションが得られると思います。
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