2026年3月7日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー 配給:ユナイテッドピープル

前置きのような解説 ー 想田和弘

2025年2月に開かれた第75回ベルリン国際映画祭で、僕は「ベルリナーレ・ドキュメンタリー賞」の審査員を務めた。世界から選りすぐられた16本のドキュメンタリー映画を、ブラジルのペトラ・コスタ監督とデンマークのリア・グロブ監督と一緒に観て、盛んに議論した。

その結果、米国のブランドン&ランス・クレーマー兄弟が作った『ホールディング・リアット』を大賞に選んだ。2023年10月7日の事件で娘リアットと娘婿アヴィヴをハマスの人質に取られた老夫婦イェフダとハーヤなどに密着し、彼らの極限状態を描きながら、報復ではなく融和への可能性を示した作品だ。

『ホールディング・リアット』は同映画祭で世界初公開されて以来、世界中の映画祭で上映と受賞を重ねてきた。この原稿を執筆している現時点で、米国アカデミー賞の「長編ドキュメンタリー賞」候補ショートリストに選ばれた15本のうちの1本に入っている。

本作が日本で劇場公開されるにあたって、配給会社ユナイテッドピープルから解説を書くことを依頼された。そこで僕は、その下準備のつもりで、2025年12月31日の大晦日、監督で弟のブランドン・クレーマーとプロデューサーで兄のランス・クレーマーにオンライン・インタビューを行った。

インタビューでは、主に本作を作るプロセスについて、根掘り葉掘り、尋ねた。この作品の強さは、登場人物たちの人生にとって重大な瞬間にカメラが回り、目の前で展開するナマの現実を、直接的に、臨場感を持って描いていることにあると思うからだ。

しかし、そうした場面を撮って世に出すことは、普通は極めて困難なことである。とくに肉親を人質に取られ、彼らを取り返そうと奮闘する家族の非日常的日常を撮るなら、なおさらである。

実際、よくもこんなにパーソナルでエモーショナルな場面でカメラを回せたなあと、感心させられる場面が多い。そしてそれを世に出すに当たって、クレーマー兄弟がドキュメンタリー制作につきまとう倫理的な問題をどのようにクリアしたのか、僕には興味があった。

※続きは公式パンフレットでご覧ください。

想田和弘さん プロフィール:
映画作家。監督作品に『選挙』『精神』『港町』『精神0』『五香宮の猫』などあり、国際映画祭での受賞多数。93年から2020年までニューヨーク在住。現在岡山県の牛窓在住。ベルリン国際映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭、釜山国際映画祭、香港国際映画祭など多数の映画祭で審査員を務めた。