Background
『それでも僕は帰る 〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』は、ホムスという街、そしてシリアが大きく変化した3年以上の期間にわたって粘り強く製作され、シリアの現状に深く迫ったドキュメンタリー映画です。2011年8月〜2013年4月に撮影されたこの作品は、シリアの現状を伝えるだけでなく、現地の人々が感じた痛みや希望を追体験させます。主流メディアが決して描くことのできなかった、この稀有で普遍的な物語は、さまざまな事件や個人の劇的な変化とともに、少しずつストーリーが展開していきます。
この映画はホムスの街に生きる活動家たちの波乱に満ちた日常を捉えています。「シリア革命の首都」とも名付けられたホムスでは、人々が苦難に見舞われながらも、デモをコンサートに変え、日々の笑いを撮影してアップロードし、市民ジャーナリズムの力で世界を揺るがしてきました。そんなホムスは現在、18ヶ月以上にわたって包囲攻撃の中にあり、この状況は現在も続いています。
ホムスは人口、商業および産業の規模でシリア第3の都市で、ユーモアに富んだ人々の気質や強豪フットボールチームの「Al Karama」(バセットがゴールキーパーとして将来を期待されていたチーム)で知られています。ホムスの人口は2011年時点で100万人弱。現在は約15万人が比較的安全な体制側エリアに住んでいるとみられており、35万人が内部での移住を余儀なくされ、困難な状況にあります。また、残りの人々は国外に散り散りになり、大半の人々が隣国の難民キャンプの中、もしくは外で、人道的援助がまったく足りない極限的な状況で生活しています。2011年以来、少なくとも1万5000人がホムスで殺害され、そのうちの約10%は子どもたちでした。また、約4万人が留置場に入れられ、その一部は拷問で亡くなり、2年以上にわたって留置されている人々もいます。解放された人々の多くがその後国を去っています。今日、ホムスへ戻ることは多くの人々にとっての「夢」なのです。
老人から女性、子どもを含む、約2000人もの人々がホムスの古いエリアにあるもっとも危険な包囲網の中で生活しています。この包囲攻撃はこれまで約600日にわたって続いており、この包囲網の打開はホムスの人々にとっての願いです。
2011年から2012年、ホムスは「革命の首都」であり、Karm Azl ZaitounやBaba Amro、Houlaなどの地域で起こった虐殺のニュースには世界中で悲嘆の声が上がりましたが、そんなホムスも今や忘れ去られています。しかし、3分の2以上が破壊されたこの街が復興し、人々がこの街に戻り、一から自分たちの生活を再開するためには、可能になり次第、大規模な再建事業が必要になるでしょう。
このような状況下で、ホムスの人々は世界から見捨てられたように感じており、包囲攻撃は今も続いています。そんな中、若くカリスマ的なゴールキーパーで歌い手、自由の戦士であるバセットと、彼に率いられたわずかな人々が、自らこの包囲網の中に戻ったのです。
(2013年9月製作のプレス資料(英語版)より)