2024年10月7日、映画『私は憎まない』の劇場公開に合わせて来日したガザ出身パレスチナ人医師、イゼルディン・アブラエーシュ博士が、日比谷コンベンション大ホールで上映後に講演を行いました(主催:ユナイテッドピープル 司会:関根健次)。ピースボート創設メンバー・共同代表の吉岡達也さん、パレスチナ子どものキャンペーン 事務局長 田中好子さん、そして日本国際ボランティアセンター ボランティア 並木麻衣さんが、ガザの状況や支援についてお話された後、アブラエーシュ博士本人がスピーチとQ&Aを行いました。
映画を観て、本人の話を直接聞いて、会場では多くの方々が涙を流していました。スピーチの後にはスタンディングオベーション。そして、退場時にもスタンディングオベーション。これまでに50人以上の親族を去年10月7日以後殺されてしまったアブラエーシュ博士による渾身のスピーチをどうぞ聞いてください。
自身の娘3人が殺された経験がありながらもイスラエルとパレスチナ間の憎しみの連鎖を断ち切るため、「医療でイスラエルとパレスチナの分断に橋を架ける」と平和活動を続ける博士は、“中東のガンジー”などと評され、5度ノーベル平和賞にノミネートされています。
ユナイテッドピープル
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以下、メッセージの一部です。
「戦争というと兵隊が殺し殺されというものを思い浮かべる人もいるかもしれません。今は違います。戦争というのが2つの軍隊の間で戦われる時代は終わり、今の戦争は台所にも来ます。ベッドルームにも来ます。病院でも来ますし、街、通りでも起きているわけです。社会のすべてが戦場となるのが現代の戦争です。そこには道徳も倫理もあります。全てが武器となり全てが軍事化されるのです。武器となるのは武器だけではなく食べ物も武器となり水も武器となりメディアも武器となります。私たちは一体どこへ行ってしまうのでしょうか。集団的懲罰と言われますけれどもこれは集団的虐殺です。健康さえも手に入れられない健康さえもが武器となってしまう。そんな戦争を私たちは経験しています。」
「たくさん戦場の景色が流れてきても、テレビを、電源を切ってしまう人もたくさんいるのではないでしょうか。もう見たくないと。しかし戦争は見られるため、あるいは記録されるために起きているわけではありません。戦争というのは病気です。戦争は病なんです。これは予防されるべきであり、避けるべき努力がなされることだと思っています。戦争というのはプロパガンダですし、人類を奴隷にしてしまうものです。何をもってしても止めるべきものなのです。」
「使命感を持って今日ここに立っています。私たちが暮らすこの世界というのは、私たちがこの世界について学び、共につながり、行動を起こしていかなければいけません。そして私たちというとき、それは皆さん一人一人も含まれます。私たちが暮らしているのは私たちの世界なのです。そのために行動が必要だし、声を上げていくことが必要です。私たちは道義的、倫理的な責任を背負っています。一人一人の力が必要なのです。」
「今、ガザの人たち、それからジャバリア難民キャンプ、私が生まれたところにいる人たちは、逃げ場もなく、来る日も来る日もあらゆる方向から爆弾が降っている、そんな景色の中に生きています。この間にも、このトークセッションの間にも、人が死んでいるかもしれない、家族が死ぬかもしれない、もしこのトークイベントの後に家族と連絡が取れなかったらどうしよう、そんなことを考えながら、今私はここに立っています。」
「でも、来日して日本の皆さんに会って、パレスチナの人たちは見放されていないと、日本の人たちはこれだけパレスチナの人たちのことを思っている。そのために祈っている。そういったことを伝えたいと思っていますし、何よりも日本の人たちは行動をしてくれていると伝えたいと思っています。ですから、皆さんに伝えたいことは、自信を持ってほしい。希望を持ってほしい。そのために一番してほしいのは、行動を起こすことです。行動というのは、やはり言葉よりも大事だと思っています。」
「声を上げてほしいのです。声を上げてください。パレスチナの外にいる人の中にも声を上げられない人たちがたくさんいます。その人のためにも皆さんに即時停戦の声を上げてほしいのです。」
「即時停戦をすることでこれ以上血が流れることのないように戦争を止めてほしい。そして自由、尊厳、平等、権利こういったものがパレスチナに訪れるように 平和で持続可能で何よりも健やかに人々が過ごせるような そんな世界がパレスチナの人たちに訪れることを祈っています。本当に本当にありがとうございました。」
「私は憎しみは毒だと思っていますし、火だと思っていますし、憎しみを自分の中にたたえてしまいます。それはまさに敵が望んでいることだと思っていますし、私は憎しみというものを相手にとっての武器にさせないと決意しています。私は自分の心が折れることなく、絶対にその敵にとって相手をもうこれ以上前に進めないとさせることが、それこそが敵が望むことだと思っていて、憎しみというのがその格好の手段になってしまうということを理解していますので、そんなことは絶対にさせないというふうに思っています。」
「だからこそ私は憎しみにやられないのだという強い決意を持っています。皆さんにも。でも個人レベルでアドバイスがあるとすれば、ぜひ憎しみに自分を侵されないようにしてほしいということです。何か自分が大きな悲劇を経験したときに、それ以上の犠牲者に自分自身をしないために憎しみを自分にしてほしいということです。自分の中に称えてはいけないというふうに思っています。犠牲者になるのは一度でいい。二度も三度も犠牲者にならないためには、絶対に憎しみにやられてはいけない。なぜならそれこそが敵が望むことだからです。ありがとうございます。」
「人生は小さな行動から始まります。一人一人にできることがあります。自分の行動を過小評価しないでほしいというふうに思います。全ての行動が小さな行動から始まるのです。ですから声を上げるでもいい、団体に参加するのでもいい、そういった小さなことから始まりますけれども、何よりも恐れずに声を上げてほしいというふうに思っています。皆さんが今もし自分が声を上げてみてもいいのかもしれないと思うのであれば、それはきっと正しいことです。個人レベルでもいい、家族でもいい、コミュニティレベルでもいい、国家でもいいですし、国際社会という単位でもいいですから、今声を上げるということが求められています。」
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