2025年7月11日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー 配給:ユナイテッドピープル

トルコのシリア国境からヨーロッパを横断し、新たな居場所を見つけようとする身長約3.5メートル、9歳の大きな人形のシリア難民の少女、アマル。彼女の旅が本作『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』の中心です。また、アシルという実在のシリア難民の少女も登場します。アシルは戦争で家も家族も失ったトラウマを抱えつつも新しい居場所を見つけ、再び自由になることを夢見ていますが、トルコ国境を越えられずにいます。

ある日アシルは、ヨーロッパを旅するアマルという巨大な人形の旅の話を聞きます。アマルの自由な旅は、アシルが夢見ていることのひとつです。そこで彼女は想像力を駆使してアマルになりきり、アマルの旅はアシルのおとぎ話になりました。おとぎ話の中ではアシルは国境を越えることができ、この旅で感じる希望と恐れを表現する声を持っているのです。

アマルは各国を旅し、さまざまな町や都市を訪れます。地域社会から両手を広げて歓迎され、華やかなお祭りムードに包まれることもあれば、難民に対する暴力的な抗議が彼女に対して噴出し、恐怖を感じることもありました。また、各地で難民たちとも出会い、彼らの話を聞き、彼らがいかにヨーロッパの底辺で生きることを余儀なくされているかも目の当たりにします。しかし、彼女は新たな居場所を見つけるという希望を失いません。

映画にはアマルの主な人形遣いであり、アマルの旅を助ける友人も登場します。アマルと同じく戦争から逃れたシリア難民のムアイアドと、パレスチナ人のフィダです。2人とも戦争の恐怖とそれに伴う喪失感を経験しています。本作では彼らの人生の一部も映像で共有することにより、彼らの人生とアマルの旅とが交差する部分も感じられます。

新たな居場所を見つけるためのアマルの旅は、フランスの浜辺で一旦終わりを迎えます。ヨーロッパの果て、英仏海峡の危険な海を目の前にして、アマルの居場所は新たな地にあるのか、それとも離れざるを得なかった故郷にあるのか、という問いに直面します。その時アシルは、アマルのおとぎ話の世界で生きることが自分の問題に対する答えにはなり得ないこと、そして旅で学んだことを糧に、自分自身の道を切り開く必要があることに気づきます。

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