映画『0円キッチン』レビュー

辻信一

文化人類学者

“豊かさ”のただ中を、ダーヴィドが旅して回るロード・ムービー。彼は単に現状を見て嘆くのではない。ただ告発するのでもない。問題の現場にたって、ただひとつのささやかな答を目の前に提示する。廃棄されるはずの食材を救い出し、料理して、お皿に盛って、そして出会った人々とともに食べ、祝う。

来るべき世界のフェアで、エコロジカルで、平和なありようがぼくたちにも見えてくる。そんな“懐かしい未来”への水先案内に、ダーヴィドのゆるさ、明るさ、優しさこそがふさわしい。

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島本美由紀

料理研究家

必要な食材が何でも簡単に手に入る時代では、多くの人が、本当に必要かどうかをよく考えずに買いこんでしまう。
食材を食べずに捨てるということは、実はお金を捨てていることと一緒。
そして同時に大切な資源とエネルギーを無駄に浪費してしまうということでもあります。
最後までおいしく食べようと思う心がけと、買う前に本当に必要かよく考える習慣が大切。
そんな当たり前のことを、押しつけではなく自然に気づかせてくれる映画だと思います。

中島デコ

料理研究家

世界で生産される3分の1の食料が廃棄されている。
まだまだ食べれるのに!美味しい料理に変身させられるはず!
廃棄の食料がもったいない!なるべく無駄を無くしたい!
それを、シリアスにでも、皮肉でも、誰を攻めるでも無く、
ロードムービという形で楽しく見せてくれたダーヴィドに拍手!
やっぱり楽しくなくっちゃね。
一人で悩まず、同じ思いを持つ人で繋がりあって、楽しく考え、行動していこうって、前向きに思う事が出来る映画です。

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末吉里花

フリーアナウンサー、エシカル協会代表

今まであるようでなかったロードムービーです。

食料廃棄問題、いわゆる“食料ロス”は、すべての人にとって最も身近なところで起きている問題です。身近とはいえ、あまりに大きなこの問題にどうやって立ち向かうか。ダーヴィドが示してくれたように、私たち消費者は日々の生活の中で、少しでも食料に対して意識をすること。問題を知り、そして一歩踏み出すことです。

忘れてはならないのが、ダーヴィドに習って、楽しくユーモアを持ってやること!一人の100歩より100人の一歩が世界を変えると思います。

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井出留美

井出留美

食品ロス問題専門家 / 博士(栄養学)

食べ物には多くの命が詰まっている。食べ物を人間だとみなせば、安易に生み出し安易に殺す(棄てる)ことはできないはず。食べ物を捨てる人は、きっと、あなたの運も一緒に捨てている。

“使い捨て社会”
“利益追求“
“消費主義”

これらは、人の表情を険しくする。ダーヴィドは、そんな社会に対し、反旗を翻す。その表情は、優しく穏やか。いつも笑っている。きっと、いろんな決まりごとや制約から解き放たれているからだろう。みんながこんな優しい表情になれたら、世界はきっと、より良く変わるはず。

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佐々木俊尚

作家・ジャーナリスト

この手の映画にありがちな堅苦しさが皆無で超面白かった。街に生えてる草や昆虫食、冷蔵庫の奥の残り物まで何でも調理。

鎌田安里紗

鎌田 安里紗(モデル/エシカルファッションプランナー/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科在学)

「食べること」にもっと意識的になるべきなのかもしれません。

今、口にいれようとしているものが自分の身体の一部になるということ、それはどこかで誰かが作っているということ、そしてそれは地球と繋がっているということ。

「食べること」があまりに日常的すぎるのかもしれません。

何を食べるか、どう食べるかは、とても小さな選択に見えるけれど、実は未来をつくる、大きな選択であるということ。

「食べること」を考え直すきっかけをくれる作品です。

藤田和芳

藤田和芳(株式会社大地を守る会 代表取締役)

食べ物と向き合う姿勢を考えさせられる映画である。
かつて日本では、「もったいない」という言葉が美徳のように使われていた時代があった。お年寄りたちは「食べ物を粗末にしてはいけない」としきりに言っていた。ご飯茶碗に米粒が2、3粒残っていても叱られたものである。
それがいまは、多くの食品が捨てられている。宿泊施設で14.8%、宴会で10.7%、結婚披露宴で13.8%が廃棄されている。国内では年間1900万トンもの食品が捨てられているという。世界には8億人もの人々が飢えで苦しんでいるというのにである。この映画は、現代人の生き方を問う映画でもある。